新潮文芸振興会 第24回小林秀雄賞、新潮ドキュメント賞 贈呈式 川本三郎さん、鈴木俊貴さんを表彰

2025年10月23日

 新潮文芸振興会は10月10日、第24回小林秀雄賞、新潮ドキュメント賞の贈賞式を、東京・港区のオークラ東京で行った。小林秀雄賞は川本三郎さんの『荷風の昭和《前篇》関東大震災から日米開戦まで/《後篇》偏奇館焼亡から最期の日まで』(新潮社)、新潮ドキュメント賞は鈴木俊貴さんの『僕には鳥の言葉がわかる』(小学館)が受賞した。

 

左から新潮ドキュメント賞を受賞した鈴木さん、小林秀雄賞を受賞した川本さん

 

 開会のあいさつに立った新潮文芸振興会の佐藤隆信理事長は、『荷風の昭和』は「昭和を豊かに感じさせてくれる素晴らしい作品」、『僕には鳥の言葉がわかる』は「科学的なアプローチと大変な努力で鳥の言葉を解明していく、とても面白く、興奮する作品」と、受賞作をそれぞれ称えた。

 

あいさつする佐藤理事長

 

 小林秀雄賞選考委員の関川夏央氏は『荷風の昭和』について「荷風の人柄や、底辺に近いところで働いている女性へのやさしさが読者の胸を打つ。長い作品だが、最後まで飽きない」と高く評価した。

 

選考委員の関川氏

 

 受賞者の川本さんは、永井荷風の生涯に迫ったライフワークともいえる同作品で「花柳小説作家といわれる荷風だが、東京を愛した都市の作家であり、昭和の軍国主義の時代に女性文化のたおやかさを愛した作家であることを明らかにしたかった」とコメント。81歳での受賞に、「荷風の没年79歳を超えてこの賞を受けたことは望外の喜び」と語った。

 

 続いて、新潮ドキュメント賞選考委員の藤原正彦氏は『僕には鳥の言葉がわかる』について「実にさまざまな教訓が含まれている。世界中の子どもたちがこの本を読んで科学への興味をもち、猪突猛進することの美しさ、そして志を立てることを学んでほしい」と称賛。

 

選考委員の藤原氏

 

 受賞者の鈴木さんは「人間は先入観や決めつけによって、自らが見える世界を狭めてしまっていたのではないか。この本が、人間が自然とのつながりを取り戻すきっかけになれば」と作品に込めた思いを語った。また、同書の発行部数が現在15万部まで伸びていることにふれ、「ゆくゆくは世界中の人に読んでほしい。目指すは、世界人口の82億部」と明るい表情を見せた。