株式会社日本評論社 自社ECサイトで一定の売上 教科書採用検討ページも用意

2025年9月29日

 日本評論社は2000年から、自社サイトで書籍販売と雑誌の定期購読を受け付けるネット通販(EC)を行っており、毎月一定の売上を上げている。また、大学教科書の採用向けに情報を提供するなど、専門書出版を支えるサービスを展開している。

 

 同社は「法律・政治」、「経済」、「社会・福祉・教育・文化・歴史」、「心理・医学」、「数学・物理学・科学」の専門書を中心に、書籍を年間160点ほどと、定期刊行誌として『法律時報』『法学セミナー』『経済セミナー』『数学セミナー』『こころの科学』『そだちの科学』を発行している。

 

 累計刊行点数は書籍と雑誌を合わせて約8000点。このうち稼働点数は1700~1800点。売上の比率は書籍8に対して雑誌が2程度。「かつては雑誌の比率が大きかったのですが、雑誌市場の縮小という業界トレンドもあって、いまは書籍の方が大きくなっています」と五月女公取締役は述べる。このうち大学教科書の売上が10~15%ほどある。

 

 新刊は原則として電子書籍も同時発行するようにしており、売上の10%を超えるほどになっている。

 

 最近の書籍売れ筋は、経済分野で2024年9月17日に配本した『因果推論の計量経済学』(定価3520円)が累計4500部と好調なのをはじめ、今年8月19日配本の『統計的仮説検定の方法論』(定価2860円、初刷2200部)もたちまち重版する売れ行きだ。

 

 

 

 法律分野では、法律系資格試験受験者向けの参考書「基本シリーズ」で、今年8月25日配本の『基本憲法Ⅱ 総論・統治』(定価3300円、初刷5000部)の売れ行きが良い。同シリーズは7点刊行しており累計部数が20万部を超える人気シリーズだ。

 

 

2000年にECサイト構築

 

 ECサイトは2000年にプログラムセンターというベンダーに依頼して構築。書籍や司法試験受験対策の動画コンテンツ(CDR、ビデオ)などの紹介と販売、そして雑誌定期購読の申し込み受け付けなどを開始した。プログラムセンターはその後、光和コンピューターに合流したため、現在、保守やリプレースは光和コンピューターが担当している。

 

 開設当初、一般的に出版社による書籍通販は、ヤマト運輸と取次の栗田出版販売(現在の楽天ブックスネットワーク)が合弁で設立したブックサービスを利用することが多かった。しかし、同社はこの時から直接発送する体制を構築した。

 

 サイトで受注した商品は、埼玉県入間郡三芳町にある自社倉庫「日本評論社サービスセンター」から宅配便で出荷する。在庫情報は出版VANのデータを反映することでほぼリアルタイムに更新している。

 

 送料不要の指定書店受け取りサービスにも対応した。ただ、書店受け取りについては、需要が少なくなったことや、個人情報取り扱いの問題、書店側に手間が発生することなどから2020年に停止した。

 

 また、通販とは別に、大学教科書採用に向けて、教員が採用を検討するための教科書採用検討ページも開設した。教員が個人情報を入力することでログインし、翌年度の教科書採用を検討する秋頃に、翌1~2月に出す改訂版の情報など、一般向けには発表していない書誌情報も掲載。献本の申し込みを受け付けている。

 

月間アクティブユーザー6~7万人

 

 その後、2008年にはクレジットカード決済を導入。2016年には全面的なリニューアルを実施した。

 

 全面リニューアルでは、スマートフォン対応(レスポンシブル・ウェブデザイン)を実装。また、ワードプレスのダッシュボードを利用して、社内の担当者がお知らせ欄などのページを更新する体制に。この時、書店向けに注文書やPOPなど販促物を掲出する機能を追加したほか、正誤情報や立ち読みファイルをアップロードすることもできるようにした。また、商品の詳細ページにはAmazonへのリンクや、電子書籍の有無を表示した。

 

五月女取締役(右)と三角執行役員

 

 サイトの月間アクティブユーザーは6~7万人。アクセスは平日の日中が多いという。通販利用者などの登録会員は約1万5800人、メルマガの配信は3900人。メルマガでは新刊情報などを月1回程度配信しているが、「メール会員には過去に2回ほど当社の商品に使えるクーポンコードを送り、それなりの手応えがありましたが、登録会員情報の活用はこれからの課題です」と三角敏哉執行役員営業担当。

 

 サイトの運営は営業部宣伝課のスタッフ2~3人が担当。ECの注文は月に100件台はあり、売上は30~40万円ほど。雑誌の定期購読申し込みもある。利用者の決済はクレジットカードが多く、かつて多かった代引き決済(ヤマト運輸宅急便コレクト)は減っているという。

 

 プロモーションについては、WebよりSNSでの発信が主流になってきていることから、今後の展開について五月女取締役は「Webの運用は変えていく必要があるかもしれません。他社の取り組みも参考に自社サイトの役割を考えていきます」と述べている。

 


 

株式会社日本評論社

創 業:1918年12月

資本金:2000万円

従業員:65人

代表者:柴田英輔

所在地:〒170-8474 東京都豊島区南大塚3-12-4

電 話:03-3987-8611