株式会社吉見書店は2020年にIT導入補助金を活用して外商システムを更新。社内サーバーの運用からクラウドシステムになったことで、複数端末で運用することができるようになった。また、システム更新に合わせて売掛金や入金の入力ルールを徹底するよう業務フローの見直しも行った。
同社は明治維新後、徳川家に従い駿河へ移住した幕臣の創業者・吉見義次氏が1879年に静岡市で書籍商を始め、『駿國雑誌』を代表とする出版事業を行った。4年後の2029年には150周年を迎える。
現在でも教科書や医書を含めた外商を行っており、静岡市葵区に外商本部、三島市に東部営業所を置き、静岡県内の小中学校、高校、大学、各種専門学校、官公庁、公共機関、病院、一般企業などに納入している。外商本部が入居する自社ビルは市の中心部に位置する。

外商本部が入る吉見ビル(静岡市葵区)
書店の店舗は静岡市駿河区の長田店1店舗。このほか、フランチャイズでサーティワンアイスクリーム8店舗、直営のカレー店1店舗を運営。社全体の従業員数は165人、このうち外商本部は営業担当者と営業事務、本部社員を合わせて20人体制だ。

外商本部内
クラウド型のシステムに更新
外商システムは長年使ってきた光和コンピューターのクライアントサーバーシステムを、クラウドシステムに入れ替えた。2019年半ばから新旧システムの並行稼働を始め、2020年1月末に新システムを単独で本稼働した。
「以前のシステムとは画面デザインや使い勝手などが大きく変わったため、長年使い慣れていた営業事務の担当者には当初戸惑いもありましたし、不具合もありました」と吉見佳奈子専務取締役。しかし「操作に慣れることで以前より使いやすい面が多く、不具合についても光和コンピューターはその都度修正してくれて、一緒に良い形にできました」と振り返る。

吉見専務(左)と大髙主任
クラウドになったことで、「サーバー設置やメンテナンス作業が不要になり、ITコストやトラブル対応の負担が減少しましたし、IDとパスワードがあればどのPCからでも使えるようになりました」と外商本部・大髙宏之主任はメリットを説明する。新システムになってID・パスワードは20アカウント発行し、PC10台まで同時ログインが可能だ。
また、端末ごとのバージョン管理が不要となり、常に最新の状態で運用可能になったことも改善点だ。
働き方改革につながる
外出先でも利用できることから、営業担当者が出先で購入履歴や売掛の状況を確認して顧客の問い合わせに答えることも可能になった。
また、旧システムでは、システムのアプリケーションが入ったPCはネットに接続されていなかったので、システムを使いながらネット検索や発注などができず、別のPCに移動して作業しなければならなかった。「これが意外とロスになっていました。今はシステムを使いながらネットで調べたり、さまざまなサイトで発注することもできます」と吉見専務。この結果、業務の効率化ができ、働き方改革にもつながった。
機能的にも、顧客ごとの売上情報が即時に記録され、集計や分析も行えるため、営業実績の把握や経営判断に役立っているという。
入金・売掛管理を徹底
新システム導入を機に、月に7日あった締め日を主に月末に集約。請求書など用紙が不要な取引先を選別することで、印刷用紙も大幅に削減した。これらの取り組みで職員の残業時間も減らすことができた。
また、現金決済が多い教科書販売や集金など、これまで漏れもあった入金管理を徹底。「システム導入を機に、店舗のレジと同じという考えで、外商の会計は全てシステムを通し、入金処理も確実にするようにしました。それにより翌月半ばに前月の売掛残一致を実現。担当者による毎月の売掛残高確認も徹底し、大きな意識改革ができてうれしいです」(吉見専務)と業務フローの見直しも行った。
システム導入に当たっては、IT導入補助金を活用した。申請に当たっては経営診断などが必要だったが、同社の顧問社労士や顧問税理士とともに光和コンピューターがサポートした。「その後も光和コンピューターに協力してもらい、効果報告を行いました。補助金を活用できたことは大変ありがたいです」と吉見専務は話している。
株式会社吉見書店
創 業:1879年
資本金:1000万円
代表者:吉見光太郎
従業員:約165名
外商本部
所在地:〒420-0035
静岡県静岡市葵区
七間町3番地 吉見ビル4F
電 話:054-252-0157