文化通信社セミナー2025 サンマーク出版・小林氏「書籍出版社にも海外展開のチャンス―実用書・小説を世界的ベストセラーに育てたサンマーク出版の手法」

2025年7月10日

 文化通信社は6月26日、サンマーク出版・国際ライツ部部長の小林志乃氏を招き、オンラインセミナー「書籍出版社にも海外展開のチャンス―実用書・小説を世界的ベストセラーに育てたサンマーク出版の手法」を開催した。出版物の海外展開は従来コミック中心であったが、同社では『人生がときめく片づけの魔法』(近藤麻理恵著)、『コーヒーが冷めないうちに』(川口俊和著)など、実用書や小説のジャンルで全世界売上累計4000万部を記録。世界的ベストセラーへと導いている。

 

オンラインセミナーを行う小林氏

 

 小林氏は初めに出版業界のグローバル動向について、マンガを通して一般書籍への関心が高まっており、2020年頃から欧米圏で日本の文芸ブームが起きていると説明。それまでは日本での刊行から欧米での契約まで4~5年かかっていたが、日本の本がブームになり、刊行から契約までのスピードが加速。さらに25年からはジャンルの幅も広がり、フィクション・ノンフィクションを問わず、複数言語にまたがる契約が増えているとし、「日本の書籍ライツビジネスにとって、過去最大のチャンスが到来中」であると明かした。

 

 そして、世界的ベストセラーにまで育てるためには、「英語圏が鍵になる」と明言。英語で契約をすると、英語を公用語とするさまざまな国へ広まり、それに連鎖してヨーロッパ言語での契約も増加する。同時多発的に多数のマーケットでベストセラーになると説明した。さらに、中国では一度売れるとロングセラーになりやすく、中国内だけで数千万部を売り上げることもある、とてつもなく大きなマーケットであると述べた。

 

 同社で取り組んでいる業務について、20年頃まではブックフェアへの出展や英文カタログの制作、国内のベストセラー作品の英訳などがあったが、エージェント主導の売り込みが活発化したことやAI翻訳の普及を受け、現在は著者や現地の出版社とのリレーションに注力していると明かした。具体的には、著者によるサイン会や講演会のスケジュール調整、各国から数千万部単位で依頼のあるサイン本の制作・管理、イベント告知のための著者メッセージビデオ制作などを挙げ、「社内外のあらゆる人の協力を必要とし、労力も時間もかかる作業だが、非常に重要な業務」だと話した。

 

 最後に、海外展開における成功の基準として「ロングセラーとベストセラーが併走している状態を常にキープすること」であるとし、「ロングセラーの安定感とベストセラーの瞬発力を毎年発揮できると成功したと言える」と語った。

 

〈今後のセミナー〉

□7月17日(木)15:00〜16:30 トーハン代表取締役社長川上浩明氏による「出版流通をどう維持するのか―トーハンが見据える未来を聞く」をオンラインで開催する。

申し込みはPeatix:https://peatix.com/event/4449414

 

□7月31日(木)15:00〜16:30 丸善ジュンク堂書店 取締役 丸善丸の内本店店長・文具営業部部長・店舗業態開発部部長 篠田晃典氏による「書店が仕掛けるIPビジネスの目指す先―丸善ジュンク堂書店『EHONS』の成果と可能性」をオンラインで開催する。

申し込みはPeatix:https://peatix.com/event/4474243