「The Bunka News」デジタル版 5月月間閲覧ランキング 1位「群像文学新人賞に京都の書店員駒田氏」 担当編集者「不思議な魅力にあふれた作品」

2025年6月3日

 文化通信社はこのほど、2025年5月の「The Bunka News」デジタル版で月間アクセス数の多かった記事を集計した(集計期間は4月26日~5月23日)。最も読まれたのは「第68回「群像新人文学賞」に京都の書店員駒田隼也氏」(5月7日配信)だった。

 

25年5月「The Bunka News」デジタル版アクセスランキングのサムネイル

 

 第68回「群像新人文学賞」の当選作「鳥の夢の場合」の作家が駒田氏である一報が流れると、母校の京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)文芸表現学科はXアカウントで祝福。14日にはブログでも言及し駒田氏のコメントを紹介した。  

 

 駒田氏は「ここにいるのは制作や表現と名のつくものに引き寄せられて集まったひとたちなのだと、それだけで何か信頼があり、大学にはくつろいで居られました。そう言うわりに授業はさぼりもしましたが、教わったことは伏線が回収されていくみたいに、特にこの頃は、思い出すことがあります。」と同学科で過ごした日々を回顧した。

 

 『群像』担当編集者の細谷享平氏は「京都で書店員をしながら執筆活動に励む駒田隼也さん。第68回群像新人文学賞受賞作『鳥の夢の場合』は、自分の心臓が止まっていることに気づいた蓮見が、シェアハウスで同居する初瀬に『おれ、死んでもうた。やから殺してくれへん?』と頼むところから始まります。そこから初瀬が自らの意思を決めるまでの55日間が描かれるのですが、特徴的なのはその描写のされ方で、過去と現在を行き来しながら、人称や視点まで次々に移り変わっていきます。読んでいるうちに、どこか現実と夢の間を漂うような、あるいは生死の境を彷徨うような感覚に陥る、不思議な魅力にあふれた作品です。選考委員の町田康さんは、『結末に至るまでは、美事と言うより他なく、自分はこれを受賞作として推しました』と選評で絶賛されました。8月に単行本が刊行される予定です。新たな才能の登場に、ぜひご注目ください。」と本紙にコメントを寄せた。

 

 2位「【決算】インプレスHD 7月上場廃止へ 25年3月期は業績予想下振れ営業赤字」(5月13日)は、インプレスHDが7月に上場廃止にむけて動いていることをいち早く報じた。

 

 同社の支配株主でインプレスグループ創業者・塚本慶一郎氏と同氏の親族が代表を務める資産管理会社T&CO.がインプレスHDの株式を非公開化するための株式併合を実施する予定。塚本氏とT&CO.はインプレスHDの株式過半数以上(57%)の1676万3200株を所有する支配株主。

 

 インプレスHDの直近の25年3月期決算は、売上高143億8700万円(前期比0.5%減)とほぼ横ばいだったが営業損益は2億3700万円の赤字。前期の4億8300万円の損失から赤字幅は縮小したが、前々期からの事業構造改革で希望退職による編集人員減、書籍刊行点数の減少など課題を抱えていた。

 

 また、長期的視点からみても22年策定の中期経営計画の数字目標(~26年・売上高200億円・営業利益率10%)への到達も遠かった。短期的な利益創出が求められる株式公開企業への市場圧力と、長期的な成長を志向する同社の戦略が合わなくなっていた。創業者からMBOの提案があったのは昨年12月あたりからだったという。

 

 今後は事業会社ごとに分れている営業体制の再編、資材調達の一本化、重版時のデジタル印刷への移行などに着手する見込み。関係者によると上場廃止後、傘下の事業会社を整理する動きはないという。

 

 4位「【決算】アルファポリス 売上・利益過去最高を更新 漫画売上100億円超」(5月16日)では近年右肩上がりで業績を伸ばす同社の決算を伝えた。売上高は18年3月期(42億円)から8期連続で最高を更新。直近の営業利益も前期比40%超伸ばすなど売上・利益の創出力においては業界で群を抜いている。

 

 牽引する漫画は大台の100億円を突破。自社からアニメ化作品の原作を多く輩出し、新刊・既刊、紙・電子問わず伸び続けている。大躍進のドライバーとなっているのは新規含めた連載の本数を恒常的に増やしていることにある。また、電子販促にも注力。電子取次会社と営業担当者が各サイトのユーザー層を把握しこまめに会議の場をもち次の一手を共同で立案していることも伸長の理由の一つといえる。

 

 さらに、直近ではアニメ関連会社のM&Aを進めていることも明らかになった(「アルファポリス アニメ関連会社M&Aに意欲 自社作品は9クール連続アニメ化」・5月28日配信)。さらなる成長のカギを「アニメビジネス」に掲げているなかで交渉が成功すればもう一段上の飛躍が確実だ。

 

 6位「【追悼】菅徹夫氏(日販元社長)の市場起点発想」(5月23日)は本紙論説主幹星野渉が出版流通のインフラ整備に尽力した菅氏の功績をつづった。菅氏が進めたプリント・オンデマンドとトリプルウィン・プロジェクトについて、「いずれも供給側発想だった取次システムから市場を起点にした発想への逆転」と総括した。