
『ばらまき 選挙と裏金』と取材班スクープ紙面(中国新聞社提供)
2019年の参議院選挙広島選挙区で起きた河井克行元法務大臣らによる買収事件を追い続けた中国新聞社の「決別 金権政治」取材班が4月24日、日本記者クラブ賞特別賞を受賞した。同社の受賞は初めて。東京で5月29日に贈賞式、6月30日に受賞者の講演会が行われる。
取材班は、検察の捜査終結後も取材を継続。当時の安倍政権幹部4人が元法相に6700万円の裏金を提供した疑惑を示す「すがっち500」などの手書きメモを検察が押収していたことを23年9月にスクープし、自民党の政策活動費や内閣官房報償費(機密費)など政権中枢の裏金問題をあぶり出した。
地方から全国に波及
日本記者クラブは受賞理由について「検察の捜査終結後も『買収の原資を明らかにしない限り、事件は終わっていない』と取材を続けた。他のメディアが追わない中、地方から全国へ波及した粘り強い調査報道は高く評価できる」と選評している。
同社は本紙とデジタルで、連載「決別 金権政治」(20年9月26日~21年6月28日)を9部構成で掲載し、その後も「決別 金権政治」のカットを付けて、政治とカネの問題を追及し続けている。昨年8月には、一連の取材をまとめた文庫本『ばらまき 選挙と裏金』(集英社)を出版した。
取材班を統括してきた荒木紀貴編集局次長は、「真相に迫ろうと、5年にわたり紆余曲折を重ねてきた。最終的に政権中枢の裏金の問題に行き着き、十分な根拠を持って改革を迫る報道ができた。今回の受賞を励みに今後も取材、報道を続けていく」とコメントを寄せている。