海外翻訳の育児書がSNS反響で22万部に

2025年4月2日

 

 日経BP・日本経済新聞出版社が2023年10月に刊行した世界46カ国で200万部のベストセラー『子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本』が、電子版を含め24刷22万部に達した。英国の心理療法士・フィリッパ・ペリーによる育児書で、同書に感銘を受けた読者によるSNSへの投稿が話題を呼び、販売部数が急伸。複数回にわたり1万部以上の増刷を繰り返している。

 

 編集を担当した日経BOOKSユニット・第1編集次長の宮崎志乃氏は、ヒットした背景として一般的な実用育児書とは異なり、親子の感情にフォーカスした内容であることを挙げる。「子どもに対していらだちや怒りなど負の感情を抱く背景には、自分自身の親との関係が影響しており、子どもとの関係の前に、自分の親との関係を見つめ直すところから始めよう、というのが本書の内容。自身の親との関係に悩みを抱えていた読者から支持されており、SNSでバズった理由もいわゆる“毒親”という文脈で拡散した」と話す。

 

ネット広告・インフルエンサーマーケ実施

 

右から阿部氏、宮崎氏、村上氏

 SNSの反響を受け、同社はネット広告を展開。プロモーションを担当したリテールマーケティングユニット・書籍部兼市販誌部の阿部有希氏は「この本は4回もSNSでバズっており、私も今まで経験したことがない。多忙な母親層はネットとの親和性も高く、SNSでの反響の最大化を図った」とその意図を語る。

 

 またインフルエンサーマーケティングも実施し、インスタグラムやTikTokなどで活躍する子育て中のインフルエンサーに同書を紹介してもらうことで拡販につなげた。リテールマーケティングユニット・市販誌部兼書籍部の村上素氏は「時期をおいて2回ほど実施し、各7名のインフルエンサーに紹介してもらった。共感の声なども多数あり、販売部数の伸長につなげることができた」と手応えを語る。

 

 ネットやSNSを通じて認知拡大を図る一方で、潜在的な読者とのタッチポイントを増やすべく書店店頭での展開も厚くした。阿部氏は「ネットで知った方がその場で購入しなかったとしても、書店店頭で見かけて購入につながるケースも多い。本体2200円と実用書としては高額だが、実用・育児ジャンルに強い書店でも売れている」と話す。

 

 

 また2月に初版1万6000部で刊行した、同じ著者による第二弾『身近な人間関係が変わる 大切な人に読んでほしい本』も好調で、すでに1万部を増刷している。第一弾と比べ、ネットではなく書店店頭での販売シェアが大きく、同社は3月から両書籍の新聞広告を全国の地方紙に掲出。各地方書店で展開するなど、さらなる販路拡大を図る。阿部氏は「今後も宣伝広告やパブリシティを仕掛けていくので、継続的に展開してほしい」と書店に呼びかける。