文化通信社は2月6日、オンランセミナー「出版業界のために図書館が果たす役割とは」を開催した。講師の図書館流通センター(TRC)代表取締役社長・谷一文子氏が、変化を続ける図書館の最新事情や出版業界との関係、図書館との付き合い方などについて語った。

オンラインセミナーを行う図書館流通センター・谷一氏
TRCについて谷一氏は「図書館を総合的に支援する国内唯一の『図書館専門』企業。図書館用書籍の装備・納品、書誌データ『TRC MARC』の作成、図書館業務の運営などを中心に、日本全国の公共図書館、学校図書館、大学図書館、専門図書館など、あらゆる図書館の業務に関わり、それぞれのニーズに沿ったサービスを開発・提供している」と説明。
次に「在庫および加工を同じ場所で行う」図書館専門の物流センターである新座ブックナリーの特色、スケジュール、搬入から棚入れ、ピッキング、装備、フィルムコーティング、梱包・出荷について詳細を話した。また「TRC MARC」と新刊図書情報誌 『週刊新刊全点案内』、「新刊急行ベル」についてなど、情報の集約と提供について語った。
そして「公共図書館の現在」として紹介したのが、全国の特色ある図書館の数々。貸し出しをしない図書館をはじめ、カフェが併設されている図書館、子育て支援施設の役割を果たす図書館など、変わりゆく図書館の現状を紹介した。現在図書館に求められていることは「本を貸し出す」ことだけではなく、地域のコミュニティを形成したり、幸福感を得られる場所であることだと話した。それに伴って図書館の評価の指標も変化しているという。
また「図書館が発展すると困るの?」というテーマでは、必ずしも図書館の増加が出版界に負の影響を与えているわけではないことをデータで展開。その上で「図書館は本のショールームになる。子どもたちも含め、本を読む人たちを増やしていきたい。ともに裾野を広げられ存在でいられたら」と思いを語った。さらに今後の図書館の展望として、電子図書館の導入や欧米の図書館のように本だけではなく、興味深いものや、楽しく、役に立つものを貸し出す展開も視野に入れているという。
最後に「地域の書店さんとも今後はもっと連携していきたい。また、出版社の方にも図書館にもっとアピールしてもらいたい。講演をしたり、欠本調査をしたり。ぜひさまざまな形でコンタクトをとってみてください」と話した。
