【決算】日販GHD 18年度以来最終損益マイナス 単体は営業損失20億円

2023年6月1日

 日販グループホールディングス(GHD)は6月1日、2022年度(2022年4月~23年3月)決算を発表した。連結業績は売上高4440億円(前年同期比12.1%減)、営業損益は4億円の赤字となった。海外及びコンテンツ事業は過去最高売上・利益となりエンタメ事業も黒字転換したものの、取次・小売事業の大幅減収、赤字が影響した。経常損失1億円(前年同期は36億4800万円の黒字)、親会社株主に帰属する純損失2億円(前年同期は13億9100万円の黒字)で、連結最終損益は赤字になるのは18年度以来。

 

 

 

 取次事業の売上高は4023億1400万円(前年同期比12.6%減)。金額ベースでは580億円超落ち込んだ。取引書店の閉店や大手書店チェーンの取引先変更が大きく影響し、営業損益が24億2900万円の赤字だった。返品率は書籍、コミックスで悪化。書籍は取引先変更の影響があり2.8ポイント増の29.8%。2期連続で改善が続いていたが一転悪化した。コミックスは2.1ポイント増の26.5%。合計では35.4%と0.9ポイント増となった。

 

 コロナ前の2019年と比較すると客単価は112.6%と増加傾向にあるが、来店客数は同年比11.7%減。日本出版販売(日販)の奥村景二社長は決算説明会で「ここにきての客数減少は我々の想定している以上に落ちている状態」と総括。普段それほど本を購入する機会のないライトユーザーにむけてさらなるアプローチが必要であることを強調した。

 

 

「縦横無尽に取り次ぐ」のキーワードを説明した奥村社長

 

 

 小売事業の売上高は537億2400万円(同12.8%減)。同期から新規連結した「駿河屋BASE」の「駿河屋」や、新たな複合商材「ガシャポンバンダイオフィシャルショップ」などにより雑貨、ゲーム、トレカなどの本以外は売上が増えた。営業赤字額は前期から改善し1億5800万円だった(前期は2億4600万円の赤字)。

 

 海外事業の売上高は74億1100万円(同4.4%増)、セグメント利益は2億8500万円(同26.2%増)で、過去最高。事業セグメントの5割を占める海外駐在員向けサービス「CLUBJAPAN」が業績に貢献。新規取引先開拓も進んだ。雑貨事業の売上高は31億9400万円(同0.1%増)、セグメント利益8400万円(同62.5%減)。売上はほぼ横ばいだったものの、光熱費の値上げや円安による仕入価格上昇で減益となった。

 

 コンテンツ事業の売上高は40億2800万円(同40.4%増)、セグメント利益は6億2900万円(同19.8%増)。海外コミックの国内配信「Rush!」の売上が大きく伸長。縦読みコミック、ウェブトゥーンへの先行投資で新レーベル「JAMTOON」を始めた。

 

 エンタメ事業の売上高16億2200万円(同10.1%増)、セグメント利益5100万円(前年同期は400万円の赤字)。イベント開催件数が増えたことで収益性が大幅に改善した。

 

 不動産の売上高は32億2300万円(同4.1%増)、セグメント利益11億1600万円(同4.7%減)。物流施設ロジクロス蓮田の賃貸が期中から始まったことで収益を押し上げ。同社が入居する新お茶の水ビルディング含むオフィスビル4棟の空室率は1%を切る水準で推移している。

 

商品売上高500億円マイナス

 

 日販単体の売上高は3550億9500万円(前年同期比12.9%減)、営業損益は20億6700万円の赤字となり前期7億3400万円の黒字から後退した。売上総利益が前期比43億円減ったことに加え、販管費削減が15億円程度にとどまったことで赤字となった。

 

 商品売上高は書籍が300億円弱落ち込み(前期比14.1%減)、1818億8100万円。雑誌が92億2100万円減の911億9900万円、コミックスが80億円減の637億5700万円となり、商品売上高全体では500億円超のマイナスとなった。大手書店チェーンの取引先変更による影響によって110億円分減収となった。

 

新たなキーワード「縦横無尽に取り次ぐ」

 

 奥村社長は、配送における積載率は配送コース再編で一定の効果はあるが、業量減少による配送効率悪化はさらに喫緊の課題としたうえで、関係者に協力を求めた。固定費削減については24年内に拠点統廃合で新たな物流センターを始動させる考えも明らかにした。

 

 また、今後自社の方向性として「縦横無尽に取り次ぐ」をキーワードに掲げた。「親和性のある商材はどんどん活用したい。本屋さん以外の場所づくりもしていきたい。『縦横無尽に取り次ぐ』をキーワードにして新しいビジネスを生み出したい。最終的に書店さんに読者を回帰させる一手になれば」と述べた。

 

※初出時に数字等の誤りがありましたので、2023年6月5日に一部修正いたしました。