【共同受発注サイト特集2022】インテージテクノスフィア「Bookインタラクティブ」 出版社と書店をつなぐプラットフォームに

2022年6月21日

受注サイト・POSデータ・在庫データを連携

 

 出版社・書店間オンライン受注システム「Bookインタラクティブ」を運営する株式会社インテージテクノスフィアは、書店の実売データを収集して出版社に配信する「出版POSシステム」事業などを通して、30年以上にわたり出版業界に関わってきた。さらに、書店の在庫データを出版社に提供する「在庫データ中継サービス」も手掛けることで、出版社と書店をつなぐプラットフォームを活用した「出版営業DX」の実現を目指している。

 

インテージテクノスフィアが描く出版営業DXのイメージ

 

出版業界全体を「つなぐ」ことを目指す

 

 同社が属するインテージグループは、消費財・サービス業界のマーケティング支援事業、ヘルスケア業界のマーケティング支援事業、ビジネスインテリジェンス事業の3事業を展開する国内最大手のマーケティングリサーチ企業だ。

 

 インテージテクノスフィアは、このうちビジネスインテリジェンス事業領域を担い、出版業界向けには、「出版POSシステム」、「Bookインタラクティブ」、「在庫データ中継サービス」を展開する。

 

 さらに、出版業界団体の日本出版インフラセンター(JPO)から全国書店のデータベース「書店マスタ管理センター」(会員は出版社など約400社)のマスタ管理と「日本図書コード管理センター」のISBNコード発行管理の事務局業務、そして日本雑誌協会から「雑誌POSセンター」の雑誌実売データ集計・公開業務(出版社51社に17法人1万1000拠点のPOSデータを提供)を受託運営している。

 

出版業界向けサービスを担当する馬場氏(右)と佐藤氏

 

 こうしたサービスを通して「業界の各種データの集約、分析を通じて業界活性化につながる価値あるデータを提供することで、出版社、書店、取次、倉庫会社をはじめとする業界プレーヤー間の連携を強力に『つなぐ』ハブとして貢献していきたい」と、ビジネスインテリジェンスユニットBI三部出版グループマネージャーの馬場一朗氏は話す。

 

コロナ禍で「Bookインタラクティブ」利用大幅増

 

 出版社向けの「出版POSシステム」は、出版社主導でスリップの電子化・集計サービスから始まり、現在ではPOSデータ収集・配信の業界標準サービスに成長。

 

 全国の書店約5000軒から収集した日次・月次のPOSデータをWebシステムで集計・配信している。約260社の利用出版社は、このデータを需要予測、重版判断、企画立案などに役立てているほか、プロモーションの効果測定、書店への提案資料として状況を共有し、日々の業務に利用している。

 

 一方、「Bookインタラクティブ」は、書店が出版社にオンラインで商品を注文するプラットフォーム。現在、出版社70社、書店約5200軒が登録している。

 

「Bookインタラクティブ」のサイトイメージ

 

 コロナ禍前は、書店の閉店が続いていたことで、5000軒以上だった登録書店数は4800軒ほどに減少していた。しかし、コロナ禍による出版社から書店への営業活動の変化や新たな注文ルートとしての書店からのサイトを利用した注文需要増により、登録数が再び増加し現在も利用書店は増加している。

 

 「FAXや電話の注文だと出社しなければ受けられませんし、書店からの注文を受ける窓口を増やしたいというニーズが強くなりました。そして、そもそも営業でカバーできる書店数には限りがある中で、全国5000軒へ商品を紹介できる場になっていることから、ご利用出版社からは、これまで注文がなかった書店から注文が入ってくるようになったというお声をいただいています」と馬場氏は述べる。

 

 コロナ前は30社足らずであった契約出版社は2年で倍増し、今年4月からでも12社増えている。

 

 この中には今年4月まで書店向けオンライン発注サイト「PHPWEBかけはし」を自社で運営してきた出版社のPHP研究所も含まれる。

 

 同社はサイト切り替え発表の中で、「働き方改革に加えてコロナ禍が続き、書店様の負担を少しでも減らしていただくためには、各社が参加しているシステムに入ることが、書店様の発注の利便性を図ることにつながると考えた」と説明した。

 

書店側の利便性、利用頻度もアップ

 

 利用する出版社と書店が増加したことに伴い、注文数量も増加。いまは毎月約50万から60万冊(年間約650万冊)注文が行われている。

 

 また、注文にとどまらず、書店は「Bookインタラクティブ」を通して新刊情報や重版情報、パブリシティー情報などの販促情報を受け取ることもできる。書店はトップページにある各出版社の販促情報に掲載されている商品をダイレクトに注文出来るようになっている。さらに、重版情報、POPのダウンロードや、出版社別の注文ランキングの確認、重版商品の検索もできる。

 

 「Bookインタラクティブの利用傾向を見ると、書店は発注に際して、出版社が推したい本の情報や、出版別の注文ランキング等を参考にしているようです」と、開発を担当するビジネスインテリジェンスユニットBI三部出版グループグループリーダー・佐藤真也氏は説明する。

 

 最もよく利用されるのは、ISBNや書名、著者名の一部からでも手軽に目的の商品を検索できる「クイック検索機能」だという。受発注サイトでは、書店が目的の商品をすぐに探して発注するという傾向もあるようだ。

 

 書店の利用時間は平日日中の午後が多いが、22時以降の夜間にも注文が入っている。24時間利用可能なメリットを活かし、閉店後の落ち着いた時間に、複数の出版社商品への注文を一括で行う書店もあるという。

 

 書店が発注できる上限冊数は、システム上999冊まで入力できるが、同じ商品が100冊以上注文された場合は確認を促すためアラートがでる。

 

 書店から注文が入った場合、出版社は注文品の出庫の可否と、出庫数、出庫日を登録する。書店側では、サイトから発注した商品の出庫可否や入荷数量、時期を出版社登録後確認することができる。

 

 出版社は注文状況について補充と客注を分けて確認することができる。また、オプション機能を利用することで画面から受注に対する出庫情報をまとめて入力することも可能だ。

 

 書店からの要望をうけて、注文をCSVファイルでアップロードする一括注文機能もリリースされており、本部からの集中購買を行う書店の利用にも対応している。2021年6月からは日本出版インフラセンターの書店向け出版情報ポータルサイト「BooksPRO」との連携もスタートし、「Bookインタラクティブ」のバナーから商品詳細ページに移動し、すぐに発注を行うことができるようになった。

 

取次取引無くても利用可能

 

 「Bookインタラクティブ」への登録は、書店は日本出版インフラセンターの共有書店マスタへの登録が必要だが、取次番線の有無は必須ではない。

 

 一方、出版社は書店の発注を受けるために取次の取引コードを登録するが、取次会社を通さない書店直接取引の出版社も登録は可能だ。

 

 書店の利用は無料。出版社が負担する料金は、初期費用10万円と月額利用料。利用開始から3カ月間は1 カ月1万円の固定で、4カ月目からは3カ月目の受注冊数と出庫冊数の実績により価格を決定する。価格テーブルは冊数ごとに設定されている(表)。

 

 

 

 現在の利用出版社で最も多い料金は3万円。また、画面から出庫情報をまとめて入力するオプション機能の料金は月額5000円。

 

店頭在庫の共有に注力

 

 いま、同社がもう一つのプラットフォームとして推進しているのが書店の在庫データを出版社と共有する「在庫データ中継サービス」だ。

 

 「出版POSシステム」で蓄積した販売データに書店の在庫データを組み合わせることにより、店頭で補充すべき商品の選定に役立てる。在庫データそのものは、複数の書店がそれぞれ運用するシステムで管理されている個別のデータを、一つのフォーマットに変換・統合して出版社に提供する。

 

 出版社は欠品状況を把握することで書店への送品、提案をより細かく実施できるようになり書店側の欠品補充作業が軽減できる。

 

 現在、書店5法人、約320店舗の在庫データを収集しており、学研プラスをはじめとした出版社3社が利用を始めている。このうち学研プラスでは、自社定番商品が店頭から欠品しそうになれば自動で追送する仕組みに活用している。各出版社からは書店を増やしたいという要望があり、書店の参加を募っている。

 

 同社では今後、「Bookインタラクティブ」を基盤として、「出版POSシステム」、「在庫データ中継サービス」のデータをさらに価値あるデータに変え、より出版業界の課題解決に貢献できるサービスへの成長を目指している。

 

株式会社インテージテクノスフィア

代表者:代表取締役社長・饗庭忍

資本金:1億円

売上高:101億円 (2021年6月期)

従業員:495名(2021年7月1日時点)

 

問い合わせ先pubpos-sales@intage.com(担当:馬場、佐藤)

 

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