新聞協会 犠牲者の「実名報道」 報道機関の考え方を公表

2022年3月14日

 日本新聞協会は3月10日、犠牲者の実名報道に関する疑問や報道側の考えを一問一答形式でまとめた「実名報道に関する考え方」を、協会ホームページで公表した。

 

 

 同協会によると、2019年7月18日、36人もの命が奪われた京都アニメーション放火殺人事件が起きたが、「この痛ましい事件をきっかけに、報道のあり方について改めて議論してきた」とし、「特に、犠牲者を実名で報じたことに関して読者などから様々な意見が報道各社に寄せられたことから、事件や事故で犠牲になった被害者の実名報道について、子どもを亡くされた遺族や弁護士など専門家の方々からも意見をうかがった」という。

 

 そのうえで、「昨年12月17日には、大阪で26人が犠牲となる放火殺人事件も起きており、考え方を整理したので、一問一答の形で、お伝えする」と記した。

 

 ①なぜ事件の犠牲者を実名で報じるのですか?②遺族などの匿名希望は考慮していますか?③実名の報道は報道側の利益のためではないのですか?④犠牲者や遺族のプライバシーを侵害していませんか?⑤遺族などへの取材では、どのような配慮をしていますか?──という5つの問いへの回答の形で、報道機関が考える実名報道の意義を解説している。

 

 例えば、「実名の報道は報道側の利益のためではないのですか」という問いには、「『報道の自由』という言葉がありますが、これは『メディアの権益』ではありません。自由な報道によって市民社会が情報を得るという公の利益のためです。『金もうけのために実名で報道をしている』などという意見も見受けられますが、事実ではありません。京都アニメーション事件では、実名で報道した報道機関が一部で激しく批判されました。もし部数や視聴率を上げたい、という目的であるなら、こうした批判の中での実名報道は得策ではないでしょう。一線の記者も儲けるために実名を報じるなどと考えることはありません。」などと答えている。