【電子書籍特集】ブックウォーカー デジタルファーストが進む海外出版のニーズに応える

2021年8月2日
差替用_図2_BW取次事業フローのサムネイル

ブックウォーカーと契約するだけで、出版コンテンツのグローバル展開が可能に

 

 ストア運営から取次事業まで、電子書籍サービス全般を手掛けるブックウォーカー。国内向けの総合電子書店BOOK☆WALKERのサービス拡充を進める一方で、最近特に力を入れているのが、海外事業の拡大だ。日本の出版社と直接契約可能な自社運営の海外向け電子書店BOOK☆WALKERGlobalを拡充させつつ、海外電子書店への電子書籍取次サービスも開始。日本の出版コンテンツを海外展開するためのグローバルプラットフォームとしての態勢を整えている。

 

グローバルプラットフォームに進化するブックウォーカー

差替用_図1_BW事業構成のサムネイル

ブックウォーカーの事業構成

 

 電子書店BOOK☆WALKERがサービスをスタートしたのは、2010年12月のことだ。当初KADOKAWAグループの電子書籍販売が中心だったが、年間で1200以上の出版社、85万以上の作品を扱うまでに拡充した。18年には同じグループにあったニコニコ書籍とサービスを統合。その後も総合電子書店として、さまざまなサービスを展開中だ。

 

 20年度の売り上げ(読み放題サービスを除く)は前年比約3割増。ここにきて大きく売り上げを伸ばしている電子書店のひとつだ。

 

プラットフォームとしての機能を充実

 

 20年度下半期(20年10月~21年3月)の売り上げは7割強が電子コミック。ライトノベルや文芸が25%弱といった構成。読者構成は男性が約7割。20代の利用者が最も多く、電子書店の中では比較的若い。

 

 1人あたりの購入金額が多いのも特徴で、1カ月の購入金額1万円以上という利用者が2割近くを占め、月額8万円以上というヘビーユーザーが0・5%も存在する。累計800万円以上という利用者も30人以上存在する。マニア層の読者とのエンゲージメントが強い書店という言い方ができるだろう。

 

 最近では「文庫・ラノベ読み放題」と「マンガ・雑誌読み放題」の2つの月額読み放題サービスを開始。さらにこの8月には、〝話・連載〟を中心とした新サービスも始めるなど、サービスの拡充が続く。

 

 そして、そういったサービスを背後で支えてきたのが同社の電子書籍取次事業だ。長らくKADOKAWAグループの作品のみ取り扱ってきたが、最近ではその実績をもとに、グループ以外の出版社作品の取り扱いも開始。電子書店から電子書籍の総合プラットフォームに、着実にその機能を拡充しているといっていいだろう。

 

海外ストアでの販売を拡大

2015年から展開中のBOOK☆WALKER Globalストア

 

 そんな、ブックウォーカーがいま最も力を入れているのが、日本の出版物の海外展開を支援する、電子書籍海外販売サービスの展開だ。同社は15年にBOOK☆WALKER Globalを開設、以来日本のライトノベル(以下、ラノベ)やコミック作品を中心に、海外向け翻訳作品の販売を行ってきた。

 

BOOK☆WALKER Globalで販売する英訳コンテンツのバナー

 

 16年には台湾現地関連会社と共同で台灣漫讀股份有限公司を設立し「BOOK☆WALKER台湾」を開設。現地出版社が提供する中国語繁体字版電子書籍を中心に台湾および繁体字圏へのコンテンツ供給も開始した。また18年より日本の出版社が日本語作品をそのまま販売できるサービスも開始し日本語書籍の需要に応えている。

 

 20年8月には、Globalと台湾、さらに日本ストアの海外利用をあわせた海外売上が1億円を突破。Global、台湾ともに20年度下半期(10月~3月)の売り上げは前年同期比約200%と実績を伸ばしている。利用者は世界140カ国以上に広がっているという。

BOOK☆WALKER Globalの作品売上ランキング

BOOK☆WALKER台湾の作品売上ランキング

 

 

出版物海外展開のハードル下げる

 

 海外向けストア事業に加え注目すべきは、日本の出版社から直接、英訳電子書籍を預かり、BOOKWALKER Globalほか海外の電子書店へ取り次ぐ、同社の国内出版社直取引型の海外取次サービスだ。出版社は翻訳作品さえ用意すれば、いや、翻訳サポートもしているそうなので、大げさにいえば、翻訳作品の用意がなくても、日本の電子書店と契約するのと同じ手間で海外にも配信できる。

 

 これまで、書籍の海外販売は、海外の出版社と契約し、翻訳や販売などを任せる「版権輸出型」が基本だったが、それと比べて大幅に手間やコストが低減できるのだ。

 

 実際、海外出版社との契約は、英文の契約書チェックなど多大な手間がかかる上、リスクチェックが大変。専門エージェントを介することで、楽にはなるものの、期待できる売り上げに対して初期費用が過大となる。

 

 大きな売り上げの見込めない開発途上国での展開に多くの出版社が二の足を踏む原因ともなっていたが、紙の書籍では、現地での物流など日本からコントロールしにくい部分があり、こうしたやり方をせざるを得ない状況にあった。

 

 しかし、電子書籍市場の世界的な拡大で、国内出版社が海外出版社を通さずとも、海外の電子書店で販売することが現実的なものとなってきた。電子書籍なら、書籍の海外展開のネックとなっていた「流通」というハードルがなくなるからだ。

 

 実際、BOOK☆WALKER Globalも台湾も基本的には世界のどこからでもアクセスが可能で、英語圏と中国語繁体字圏ほぼすべての国へのコンテンツ供給が可能となる。出版社にとって、手軽に海外市場へコンテンツを供給することができるというわけだ。

 

 さらに歓迎すべき点は、日本企業に任せるため、キャンペーンなど、海外販促企画の打合せなども日本語で可能な点だ。

 

 BOOK☆WALKER Globalでは、ブックウォーカーの子会社GeeXPlus(ギークスプラス)に所属するインフルエンサーを使った販促や、アニメ配信プラットフォームの「クランチロール」とクーポンを使った相互送客など、様々な販促企画を展開しているが、それらも、出版社と日本語できめ細かな打ち合わせをしながら展開し、実績を積んできている。そういったプロモーションサポートが得られるのも大きなメリットだ。

 

 「電子書籍は紙と比べ管理の手間や、流通コストが下がるので、出版社は海外流通のリスクが軽減され、世界同時販売や世界各国での展開を前提にした作品作りが可能になります」(同社)。ブックウォーカーは、BOOK☆WALKER Globalで海外出版社との取引を継続しつつ、取次事業で日本の出版社との直取引を拡大する方針だ。

 

 また、4月にKADOKAWAグループ入りしたアメリカの出版社「J―Novel Club」と連携し、国内出版社のライツアウト(版権輸出型)の支援も展開。日本語出版コンテンツの海外展開をワンストップで可能とするプラットフォームとして、サービスを拡充していく方針だ。

 

 〝日本発のグローバルプラットフォーム〟だからこその特性を生かせば、海外事業は身近なものとなるのは間違いない。ブランディング戦略など含めて考えた時、出版社の版権事業をデジタルファースト型にすることで得られるメリットは大きいのではないだろうか。

 

Face bookを使ったプロモーション(台湾)

クランチロールと連携した「グランブルーファンタジー」のプロモーション(Global)

 

海外マーケティングを支援するアニチューバー専門子会社を設立

 

 BOOK☆WALKERGlobalが英語圏でのコンテンツ販促で広く展開しているのがアニメやマンガ専門のYouTuber、いわゆる〝アニチューバー〟を使ったインフルエンサーマーケティングだ。

 

 アニチューバーは視聴者に対し、リアリティのあるコメントをもってアニメやコミックを紹介しダイレクトに購入に結びつけるほどの強い影響力を持つ。同社は早くから、有力なアニチューバーと連携。アニメやコミックのコミュニティの中での口コミ効果増幅に取り組んできた。

 

契約YouTuberを使った英語のコマ紹介動画。写真はGeeXPlus所属ユーチューバーSydsnap(シドスナップ)ことSydney Poniewaz(シドニー・ポニワズ)さん

 

 そして、2020年7月には、専門のYouTuber事務所GeeXPlus(ギークスプラス)をブックウォーカーの子会社として東京で設立した。GeeXPlusに所属するのは、200万人以上もの登録者を抱えるようなカリスマアニチューバーたちだ。それぞれアニメやゲーム、コミックのコミュニティに強い影響力をもっている。

 

 日本国内・海外問わず、英語圏に向けてプロモーションをしたいゲーム会社や出版社、アニメ配信会社などをクライアントとし、所属のインフルエンサーを活用したマーケティングの企画提案や動画製作を展開中だ。

 

 


株式会社ブックウォーカー(BOOK WALKER Co.,Ltd.)
所在地:〒 102-0076東京都千代田区五番町 3-1 五番町グランドビル 3F
代表者:橋場一郎
設 立:2005年12月1日
資本金:1億円