岩崎書店 福島正実記念SF童話賞、ジュニア冒険小説大賞 オンラインで贈呈式

2021年5月6日

オンラインで行われた贈呈式の模様

 

 岩崎書店は4月9日、第35回「福島正実記念SF童話賞(福島賞)」と第17回「ジュニア冒険小説大賞」の贈呈式を、オンラインで開催した。福島賞の大賞に選ばれた「AI、ひと月貸します!」を書いた木内南緒氏、ジュニア冒険大賞の「ろくぶんの、ナナ」を書いた林けんじろう氏(応募時「内田桃子」名義)にそれぞれ賞を贈った。

 

 冒頭、岩崎書店と共同で賞を運営する創作集団プロミネンス・後藤みわこ代表があいさつ。自身も2000年に「ママがこわれた」で第17回福島賞を受賞した当時のことを語り、「これからもめげないで書き続けてほしい」と激励。

 

 そのうえで、福島賞を受賞した「AI、ひと月貸します!」について、「アイデアや文章力などどれをとっても素晴らしく、完成度の高い作品」と評価した。ジュニア冒険大賞の「ろくぶんの、ナナ」についても、「発想、物語展開、文章に加え、登場するサイコロのキャラクターも高評価を得た」などと語った。

 

 福島賞の木内氏は、贈呈式が延期されていたが「一生に一度という贈呈式への参加がかなって、とてもうれしい」と喜んだ。本作は昨年8月に刊行され、すでに重版出来。愛媛出版文化賞も受賞するなど「コロナ禍の動けない状況でも、想像以上の幸せな日々」だったと笑顔を見せた。広大な厳しいプロの世界に入った今、「ワクワクするような執筆活動を、精いっぱい努力しながら楽しんで続けていきたい」と結んだ。

 

 ジュニア冒険大賞の林氏も「まさか、こんな奇跡が自分に起こるとは」と喜びを表現。勤務先でも「勇気をもらった」「自分も何か始めてみたい」などと多くの方に祝われたといい、「周囲の人たちによい影響を与えられたことも含めて賞に感謝した」と語った。

 

 新聞に掲載されていたエッセイから「山登りに例えるなら、『目標』は山頂を目指すこと、『夢』というのは山頂から眺める景色」という言葉を引用。「この受賞はその景色のひとつであり、また次の山の山頂を目指して、今後も精力的に登山を続けていきたい」と意欲を示した。

 

 岩崎書店・小松崎敬子社長は「創立75周年で多くの児童書を出版してきた中でも、両賞は特別な位置にある」としたうえで、新しい児童文学作家の誕生にあたり、「たくさんの応募作の中から選び抜かれた作品が、編集者の手で磨かれ、挿絵が描かれ、印刷され、製本され、上梓され、1冊の本になった。両氏にとって初めての1冊は、いつまでも光り輝くものであるだろう」と祝福した。

 

 さらに、受賞した両氏、そして岩崎書店それぞれが、コロナ禍である現在だからこそ、「なおさら本の素晴らしさを再確認した」という。「読むことで、どこにでも行けるし、歳もとれれば若くもなれる。女の子にも男の子にもなれる自由なツール」と木内氏。林氏も「今は見られない風景でも本だったら見せてあげられる」と語った。そして、「子どもたちが想像の翼を広げられるような作品を生み出していく」と決意し、式を締めくくった。