【学参・辞典特集】大垣書店イオンモールKYOTO店 「受験生の期待を裏切らない」品揃え

2021年2月24日

赤本全点展示を実現させた深谷さん

 

 大垣書店(大垣守弘社長)の旗艦店、京都最大級1000坪の売場面積を誇るイオンモールKYOTO店(片桐明店長)は2010年、予備校、塾がひしめき合う京都駅前にオープン。駿台予備校とは隣接し、ほか徒歩圏内に河合塾や東大受験専門の鉄緑会なども構え、中学受験の塾を含めると優に10を超える学習塾激戦地域。

 

 同店の学習参考書売場は大型店の利点を生かして40坪と広く、学参の在庫は約3万8千冊、強みの高校学参だけで2万冊を備える。

 

 京都の受験生、また大垣書店としても重要拠点となる学参売場を担当するのは入社5年目の深谷美緒さん。

 

 レストランウェディングのスタッフ経験から接客業は手慣れたものの書店勤務は未経験。レジ業務からスタートして1年が経った頃、学参担当者が異動になり、同社の「学参は子を持つ親の方が向いている」という考えのもと、中学2年と小学2年の子どもがいる深谷さんに白羽の矢が立った。

 

赤本の全点 仕入れ実現

 

 「本来は人見知り」という深谷さんだが、社内の先輩はもとより、学参の出版社や販売会社担当者らから積極的に教えを乞い、情報収集を図ってスキルを向上していった。

 

 センター試験が大学入学共通テストとなり、外部検定もテストに反映されると聞くと素早く反応。来店客が見やすいよう語学書を学参に近づけて、参考書と資格書の両方が視野に入るよう工夫した。

 

 さらに、「大学入試シリーズ」(赤本)において、出版元の教学社と交渉し、シリーズ約600点すべての仕入れに成功。全国で唯一「赤本全点展示の書店」を実現させた。深谷さんは「他店との差別化、当店ならではという特性を出したかった」と狙いを話す。前任者は業界でも名の知れたベテラン社員で、異動後しばらく数字が下落したというが、深谷さんの戦略が奏功し、今では同店売上の7~8%を常時キープしている。

 

予断許さない入試改革を注視

 

 共通テストは英語の民間試験が導入される予定だったが、見送りになるなど混乱を招いた経緯があり、深谷さんは「受験生、学校、塾も振り回された。書店の苦労は構わないけれど、品揃えなど体制が整っていないと、受験生に影響が出る」と思慮する。

 

 「次の高校学習指導要領改訂に合わせて、今回見送られた改革内容を導入してくるのでは」と予想し、「長男が大学受験の時期。まさに他人事じゃなく、一層アンテナを張っていきたい」と意気込みを見せる。

 

 深谷さんには、塾や児童館など施設で活用する教材をまとめ買いする顧客が付いている。「適した教材を相談され、数百冊なので仕入れも大変。販売会社のアドバイスも受けながら手配できた。以来毎年、注文いただく団体もあり、とてもありがたい」と話す。同社の「子を持つ親が適任」の方針が効果として表れている。

 

仕事ぶりに学参取次も称賛

 

 深谷さんの仕事ぶりについて高校学参を取引する日教販大阪支社の竹内達哉さんは「深谷さんの人柄や努力する姿、本に対する熱い思いを見ていると、多少、無理な要望でも応えなければという気持ちになる」と感服する。

 

 売れ筋は、高校学参では駿台予備校が隣ということもあり、駿台英語講師の竹岡広信氏シリーズ。『必携英単語LEAP』(数研出版)、『よくばり英作文』(駿台文庫)などが人気。赤本は地元の京都大、立命館大、同志社大、京都産業大が部数を伸ばし、東京大学も一定の動きを見せる。理系志望が多いという。

 

 高校受験の過去問題集は、「京都公立高校御三家」と呼ばれる堀川高、嵯峨野高、西京高、各専門科の「入試対策シリーズ」(英俊社)の需要が高いことも同店の特徴。

 

お薦め、売れ筋を明確に

 

地域最大級40坪の学参売場 受験生の重要拠点

 

 学参担当者としての心構えを聞くと、「受験生も保護者も熱心で情報通、購入する参考書を決めている人が多い。これだけの規模で学参のボリュームがある店なので、『ここなら置いてある』という気持ちで来店される。その期待を裏切らない品揃えを意識している」とし、「逆にアイテムが多すぎることで『どれを選べばいいのかわからない』というお客様にお薦めの参考書、売れ筋を明確にしていきたい」と今年の展開も受験生にとって頼もしい書店、存在となることを力強く誓っていた。          

 【堀雅視】