八重洲ブックセンター 第3回「八重洲本大賞」授賞式、「NEW LIFE」で大賞2作選出

2020年12月14日

ドミニク・チェン氏(左)と全卓樹氏

 

 八重洲ブックセンターは11月20日、第3回八重洲本大賞の授賞式を東京・中央区の同本店で開催した。今回は「NEW LIFE、新しい日常」をテーマに掲げ、ドミニク・チェン著『未来をつくる言葉』(新潮社)と、全卓樹著『銀河の片隅で科学夜話』(朝日出版社)の2冊を大賞に選出した。

 

 八重洲ブックセンターは、従来の書籍のジャンルにとらわれず今こそもっと読まれるべき1冊を幅広い読者に届けることを目的に、2017年から同賞を開催している。

 

 大賞に選ばれ、登壇したチェン氏は、半ば自伝的なスタイルでこれまで感じてきたことを主観的に書いた本作が「奇しくも、コロナ禍が世界を覆う直前に刊行することになった」と感慨深げな表情を浮かべた。しかも、娘が生まれたことから、「彼女のNEW LIFE、新しい命に触発されながら、人と関係を結ぶことの不思議さを見つめながら書き進めた」と振り返った。

 

 また、「外国人として日本に住み、長らく日本語で文章を書いてきた中で、初めて賞をいただくという体験をした」と話し、「外国人であることが良くも悪くも奇異の目で見られるこの国で、日本の出版社、書店、読者の方々に選んでいただけたことにどれだけ勇気づけられるか」と喜んだ。

 

 同じく大賞に選ばれた全氏は、高知工科大学に籍を置く量子力学の研究者。

 

 受賞作では一般読者向けに科学世界を詩情を漂わせつつ、ひも解いてみせた。いわゆる一般書・文芸書を手がけるのは初めてという全氏は、ミハル・アイヴァス『もうひとつの街』(阿部賢一訳/河出書房新社)を例に、「読書界全体が、精神的な有機体である」と表現。

 

 「自分が書いたものの上に、読者の感想や書評などが積み重なり、自分の手を離れたあとも育っていく有機体。そうした『精神的な植物園』において、自著はへんてこりんな花、下手をすると植物ですらなくて枯れ木かもしれない」とユーモラスに表し、受賞によって「植物園の良い所に置いていただけた」とこちらも喜んだ。

 

 最後に、八重洲ブックセンターの山﨑厚男社長が「八重洲本大賞によって、素晴らしい作品に出会うことができ、やっていて良かった」とあいさつ。受賞作それぞれの読後の感想を語った。

 

 また、同賞の特徴は大賞受賞作の出版社が、同本店で希望の時期、場所で棚1本もしくは平台1台を使って販売を仕掛けられる「どーんと大きく仕掛けます!権」が副賞であること。

 

 「著者と出版社、そして八重洲ブックセンターの連携により、NEW LIFEの中で、多くのお客様に素晴らしい本に出会っていただけるような取り組みを今後も続けていきたい」と締めくくった。