第50回「野間読書推進賞」贈呈式 世田谷親子読書会、おはなしの木が受賞

2020年11月17日

(左から)おはなしの木・前野さん、野間会長、 世田谷親子読書会・工藤さん

 

 公益社団法人読書推進運動協議会(野間省伸会長)は11月6日、第50回「野間読書推進賞」の贈呈式を東京・千代田区の出版クラブホールで開催した。地域で長く読書推進活動に貢献している団体・個人を顕彰する野間読書推進賞の団体の部は、世田谷親子読書会(東京都世田谷区)と、おはなしの木(宮崎県宮崎市)が、第50回記念特別賞には三島読書グループ連絡協議会(愛媛県四国中央市)がそれぞれ選ばれた。

 

 冒頭、登壇した野間会長は、長年にわたり地道な活動を続けてきた各団体に敬意を表しつつ、2020年の社会を取り巻く状況に言及。

 

 「新型コロナウイルス感染症の影響で、図書館の休館や学校の休校、読書イベントの中止などを余儀なくされたことは、読書推進運動にとっても試練の年だった」と語った。その反面、人々が家で過ごす時間が増えたことによって、「本を読むことの楽しさ、素晴らしさが再確認された年でもある」とし、「それだけに来年は、読書推進運動がより盛んになるよう、各団体のより一層の活躍を期待する」と訴えた。

 

 日本国際児童図書評議会・野上暁副会長が選考経過を報告。続いて登壇した国会図書館・吉永元信館長は近年のデジタル化やオンライン化の流れが、新型コロナウイルス感染症の影響で急速に進んでいる。しかし、そんな時代だからこそ実物の本をめくり、想像力をはたらかせることが大事だ」と呼びかけた。

 

外出自粛で「新たな活動の一歩」も

 

 受賞した世田谷親子読書会の工藤知子代表は、世田谷区砧図書館を拠点とする活動を紹介。幼稚園、小学校以降は学年ごとの例会を中心に活動しており、母親たちが選書から進行まで行う。本にまつわるさまざまなことに興味を持てるように、読書に限らず、ゲームやお出かけなどさまざまな活動を積極的に取り入れているという。外出自粛期間中には、オンラインでの読み聞かせやゲームを行った例会もあり、「新しい活動の一歩」となったと振り返った。

 

 同じく団体の部を受賞したおはなしの木の前野麻美子副代表は、県立図書館や幼稚園、小学校、中学校でのおはなし会が活動の中心であると紹介。特に、県立宮崎病院小児病棟でのおはなし会は33年目を迎えている。プレイルームに来ることができない子どもに対しては、希望があれば病室を訪れて読み聞かせを行っている。

 

 また、同会は「木城えほんの郷」の運営にも携わり、自然の中での豊かな読書環境を提供している。暗闇体験、10歳のひとり旅、米作り、虫取りなどのイベントを行うことで、子どもたちは本で読むだけではピンとこなかったことを体感。より想像力豊かに読書を楽しんでいるという。「保護者対象の読み聞かせ講座なども含め、これからも地道な活動を続けていきたい」と締めくくった。

 

 特別賞の三島読書グループ連絡協議会の森川啓子代表からは、受賞を喜ぶメッセージが届いた。56年の活動に伴い、今では大半の会員が高齢者だというが、坂東眞理子著『70歳のたしなみ』(小学館)を読書会で取り上げて以降、「歳をとったら教養と教育が大事」を合言葉に、日々を楽しんでいる。次の世代に読書の大切さを伝えるため、四国中央市文化祭では、小学生を交えて「民話を語る会」を催すなど、「今後も、子どもたちと読書の楽しさを共有できるような活動を続けていく」と決意を示した。