世界文化社  コロナ禍で話題の本『「これから」の時代を生きる君たちへ』、即重版で発行部数1万部

2020年5月29日

『「これから」の時代を生きる君たちへ』

 

 世界文化社が5月1日に発売した『「これから」の時代を生きる君たちへ』(ドメニコ・スキラーチェ)の売れ行きが好調だ。発売1週間で即重版、初版7000部と重版3000部を合わせ、発行部数は1万部に達した(5月25日時点)。

 

 同書は、新型コロナウイルスの影響で休校が続くイタリア・ミラノのヴォルタ高校スキラーチェ校長がホームページに掲載した「生徒への手紙」を収録した書籍。スキラーチェ校長は、手紙の中で文豪マンゾーニの歴史長編小説『いいなづけ』の一節を用いて、「デマに惑わされるな」「最も大切なのは人間らしい思いやり」と休校中の心構えを伝えている。

 

多くのメディアに取り上げられ、注目を集めたメッセージ

 

 また、スキラーチェ校長は「社会生活や人間関係が毒され、人間らしい行いができなくなることが“大きな危機だ”」と説き、「この孤独な長い日々を無駄に失われた時間にせず、有益で素晴らしい時間にしましょう」と語りかけ、こうした愛情溢れる普遍的なメッセージは世界中で話題を集めた。日本においても朝日新聞やテレビなど、多数のメディアで取り上げられ、大きな反響を呼んでいる。

 

 さらに「生徒への手紙」を公開した1ヶ月後の3月27日、イタリアの状況が更に深刻化している中、校長自身が新たに経験し、感じたことを、日本の子どもたちに向けたオリジナルメッセージとして収録。同書は「生徒への手紙」の全文に加え、追伸「日本の生徒への手紙」の2部構成となっている。

 

ヴォルタ高校のドメニコ・スキラーチェ校長

 

 追伸でスキラーチェ校長は、「リモート学習は生徒に勉強させるためのものだが、それ以上に、子供たちに生きている実感を持ってもらうために重要だと考えている」と述べ、アメリカの作家ピーター・キャメロン氏の小説タイトルを引用して、「この痛みは、いつか皆さんの財産になるでしょう」と呼びかけた。

 

 巻末にはヴォルタ高校のリモート学習(eラーニング)についてのインタビューも掲載。若者だけでなく、教育者にとっても参考となる一冊になっている。

 

編集は全てリモートワーク、売上金の一部を医療機関に寄付

 

 世界文化社の担当者によると、同書の編集は世相を反映して、ビデオ通話ソフト「Skype」とメールのみで行った。こうした完全リモートワークでの編集作業は、同社としても初の試み。販売についても電子版は4月27日に先行発売した。

 

 なお、同書の売上金の一部は、新型コロナウイルスの治療及び感染拡大防止活動を行っている医療機関に寄付する。さらに、同社が発行している婦人向け生活雑誌『家庭画報』7月号、8月号、9月号についても、売上金の一部を医療機関に寄付する予定となっている。

 

 『「これから」の時代を生きる君たちへ』=B5変判/48㌻/本体1000円