ポプラ社の低返品・高利幅、千葉社長「選ばれる出版社になる」

2019年6月28日
千葉社長

ポプラ社・千葉社長

 ポプラ社は書店が高い利幅を得られる新たな取引制度「低返品・高利幅スキーム」を提唱しているが、5月からトーハン、6月からは日本出版販売(日販)がそれぞれ傘下の書店で、このスキームによる実験を開始した。

 

 トーハンは八重洲ブックセンター(10店舗)で、児童書と一般書の全アイテムを対象に、一定期間内(2020年3月末まで)の返品枠を設定し、達成した場合に報奨金で還元する。

 

 日販はリブロプラスとえみたすの約90店舗で、児童書を対象に、返品率に応じて報奨金の還元率を設定するインペナ方式で実施する。

 

 両社とも正味を変えずに報奨金で還元するのは、取次各社のシステムが同一商品に複数正味を設定できないためだ。しかし、ポプラ社・千葉均社長は「ゆくゆくは低正味で出荷する形にしたい」と考えている。返品を抑えることで報奨金を提供すると、「どうしても書店さんの意識が返品を抑える方向だけに向かいかねない」からだ。

 

 本来は、書店が高い利幅の商品をどうやって売り伸ばすのか作戦を立てることが大切だと千葉社長は考えており、今後、こうした取り組みによって出版社が選別されることもあるとみている。

 

 「これからは選別したり、選別されたりが頻繁に起こる時代。その中で選ばれる出版社は、強い商品力と有利な取引条件を提供できるところ」と述べる。千葉社長が想定している書店への条件は、返品率の上限10%で、出版社側の出し正味60%というライン。返品率低下によるコスト削減と、将来的な定価の引き上げで原資を出す計画だ。

 

理念実現のため取り組む

 

 このスキームに率先して取り組む理由を千葉社長は、「当社にとって創業理念であり第一の課題である『ひとりでも多くのこどもを本好きにする』を実現するため」と述べる。

 

 同社が実施する「こどもの本総選挙」や「のびのび読み」の活動、書店限定の『おしりたんてい』なぞときイベントなどもこの目的のためだ。

 

 「こうした取り組みは多額の費用をかけていて、企画自体で利益を得るケースは少ない。しかし、幼児期に親と一緒に本に触れたり、書店に来ない子どもが本に出会って好きになることは、きれい事ではなく、絶対に出版業界、そして当社に返ってくる」と強調する。

 

 とりわけ子どもが本と出会う場所として重要なのが家庭、書店、図書館だ。その書店が減り続けている現状に、「これ以上書店が減るのを食い止めたい。そのためには書店が書籍を売って利益が出る構造にしなければならない」と危機感を持つ。

 

 そのため、これらの施策はネット書店ではなく、あくまでも子どもが本と出会う可能性が高いリアル書店に向けたものとして取り組んでいる。

 

 今後は、絵本専門店を対象にするなど、「いろいろなパターンで取り組みたい」としており、書店グループなどから提案があれば、「できるだけ積極的に対応していく」との考えだ。

 

 また、他の出版社との連携も想定する。このスキームを同社のインフラを共用して実施するといった取り組みのほか、持続可能な開発目標(SDGs)の取り組みとして、小ロット印刷(POD)、FSC認証用紙への切り替え、脱プラなどについて、技術を持つ他社と協同で進めていきたいという希望も持つ。

 

 出版市場の縮小傾向から脱却するために、「経験則から脱却する必要がある」と指摘する千葉社長。「いままでは新しい試みもマイナスがあるとブレーキがかかることが多かったが、プラスが大きいなら多少のマイナスがあってもやるという姿勢に転換しなければならない」と、業界常識に囚われない行動の必要性を強調する。