第6回「大阪ほんま本大賞」が『阪堺電車177号の追憶』に決定

2018年7月25日
 【関西】第6回「大阪ほんま本大賞」に山本巧次『阪堺電車177号の追憶』(ハヤカワ文庫)が選ばれ、大阪府を中心に関西近郊エリア書店で2019年1月末まで5万部を目標に店頭展開をスタートさせた。

 『阪堺電車―』は、大阪南部を走る路面電車「阪堺電車」で、85年間大阪の街を見つめ続けてきた現役最古のモ161形177号。

 戦時下に運転士と出会ったふたりの女性の数奇な運命、バブル期に地上げ屋からたこ焼き店を守るべく奮闘するキャバクラ嬢たち、撮り鉄大学生VSパパラッチVS第三の男の奇妙な対決など、昭和8年から平成29年まで、阪堺電車で働く人々、沿線住人が遭遇した事件を鮮やかに描く連作短篇集。

 OBOP実行委員会は選考理由について「大阪の歴史を今なお現役で見つめ続けている路面電車を主軸に、大阪の人情味溢れる姿を描いた」と評価した。

 著者の山本氏は「モ161形は昭和3年から80年、90年という期間を一つの路線の上で過ごし、その沿線の人々のドラマを見守り続けてきた。もし電車がそれらを語ったら、どんな話になるだろうかと思って書いた。作中の177号は85年間で一旦役目を終えるが、現実のモ161形はまだ走り続け、この先も新たなドラマが加えられる。本作とともにモ161形に声援いただければうれしい」と受賞のコメントを寄せている。

 同大賞は、有志の在阪書店員、販売会社社員でOsakaBookOneProject(OBOP)を立ち上げ、「大阪に由来のある著者、または物語」「文庫」「著者が存命」の3点を選定条件に、一次、二次選考を経て「大阪の本屋と問屋が選んだ、ほんまに読んでほしい本」を決定する。

 売り上げの一部から児童養護施設へ図書を寄贈する社会貢献活動を進めていることも特徴の一つ。過去5回で約500万円分の図書を寄贈してきた。