早川書房は1月12日、アメリカで発売即ミリオンセラーとなり、日本でもメディアが大きく取り上げている『FIRE AND FURY』の日本語版『炎と怒り トランプ政権の内幕』を、2月下旬に発売すると発表した。同社に正式に版権の案内が来たのは正月あけ、それから約1週間後の取得決定は発表前夜だったという。 原書は情報解禁日が設定されていて、発売直前になるまで詳しい情報はなかったと、版権取得を担当した同社・山口晶執行役員編集本部本部長兼企画室室長は話す。 政権側から出版差し止めの要求が出されるなど圧力がかかったことから、出版元のヘンリー・ホルトは1月9日に設定していた発売日を4日繰り上げ5日に発売した。 この前日4日に著者マイケル・ウォルフのエージェントWYLYEから山口本部長にメールが入った。 「昨年11月頃にこういう本が出るらしいという情報は入っていたが、『またトランプ本か』とあまり興味を持たなかった。しかし、内容やアメリカ政府の反応を見ていて、政治に影響を与えるような歴史的な本だとわかった」ことから版権取得に動き始めた。 日本では3連休になった6日頃から、正月明けで他社の動きが鈍い間隙を縫って、1週間程度で交渉に決着を付けた。 「規模が小さい当社は動きの速さが信条」と山口本部長。「何週間もかけてオークションをしていたら賞味期限が過ぎてしまう」とエージェントをプッシュし、結局オークションにはなったが「これほど話題の本にしては参加社が少なかったようだ」という。 こうしたやりとりが可能だったのは、同社が大手文芸エージェントであるWYLYEと日常的に版権取引があり、「毎週メールのやりとりをしている」(山口本部長)という関係の深さからだ。 現時点でWYLYEと版権取引が終わっているのはヨーロッパを中心に20カ国、まだ11カ国が交渉中だ。アジアでは同社だけが交渉済みのリストに名を連ねる。 現在、2カ月下旬の刊行に向けて急ピッチで翻訳、編集作業を進めている。同社は映画公開直前に版権取得したときなど、年に3回ぐらいは「最短だと翻訳10日、編集期間1週間ということも」という突貫作業に慣れているという。 そのため、こうした作業に慣れた翻訳会社や校正会社などとのネットワークもある。12日の発表時点でISBN、価格などは決めており、ネット書店では仮書影で予約を開始。その後、表紙も確定した=写真。 アメリカ発売時の話題はある程度落ち着いたが、1月30日にはトランプ大統領就任1年目の一般教書演説が予定されている。これに向けて国内メディアからの取材申し込みも多いという。 また、日本版発売に向けて、著者インタビューなども交渉中。自社サイトでの抜粋公開や、SNSでの発信など、ネットを使ったプロモーションで話題を盛り上げていく予定だ。 □四六判/本体1800円