姜尚中氏「書き手も動くべき」と指摘 TIBF基調講演で呼びかけた

2009年7月15日

 第16回東京国際ブックフェア基調講演は7月9日、東京・江東区の東京ビッグサイト会議棟で、東京大学大学院情報学環・姜尚中教授が「『悩む力』で“現代の古典”を発掘する」と題して行い、「3年持ちこたえれれば必ず光がある」と呼びかけた。

 講演会には1300人の申込みがあった。姜氏は、最近、古典が読まれるようになったことは不思議なことではなく「近代が創り出したものは終わって、後は我々がリサイクルする時代に入っているのではないか。問題はリサイクルの方法」と述べ、「古典に大胆な新しい光を投げかけてみれば、今の若い人が読みたいものにひっかかるのでは」と指摘した。

 本を考えていく上で▽古典をリサイクルしていく「クラシックルネッサンス」▽多くの人が自分に最大の関心を持つことからハウツー本に徹する▽アカデミックな水準を反映させる学術書は堪えなければならず、メディアミックスなど様々な仕掛けが必要▽読み捨てられていくべき本も必要、をあげ「出版はいくつかの棲み分けをしながら生き残っていかざるを得ない」とした。

 そして難しい問題として雑誌をあげ、「玄人といわれる人がやってきた方程式が成り立たなくなっているので、方程式を替えるため」とし、月刊誌などの生き残りのプランとして著名な人物を半年程度編集長にすることを提案。  

 編集者についても、「書き手に新しい料理方法を、思う存分振るえるような台所は用意して欲しい」とし、編集者の役割が重要となってくるとした。

 さらに、書き手も1冊でも多くの本が読者にわたるように動くべきだとし、「書き手も出版不況の責任者として、自分が動ける範囲で動かなければいけない」と述べた。

 最後に、「出版業界は総力戦で戦わなければいけない時代に来ているが、3年持ち堪えれば必ず光がある」とし、「私も微力ながらお役に立ちたい」と述べた。