【書店セルフレジ特集2021】光和コンピューター 昨年夏にセルフレジをリリース くまざわ書店など3 店舗で導入実績

2021年12月15日

 光和コンピューターが取引先書店経営者からの要望を受け、セルフレジ開発に着手したのは2019 年秋。1年ほどの開発期間を経て2020 年夏にリリース。これまでに宮脇書店越谷店「BOOKS ほんのいえ」(埼玉県越谷市)と、くまざわ書店の田町店(東京都港区)、蕨錦町店(埼玉県蕨市)、イーアス春日井店(愛知県春日井市)で導入された。開発にあたっては、出版業界でセルフレジの開発、導入を先行した三洋堂ホールディングスの監修を受けたが、クレジットカードの決済端末の検証に多少時間がかかったという。

 

木製什器(上)と金属製什器(下)を提供。ブックカバーや袋などを置く棚も用意されている

 

 

2022年1 月には図書カードにも対応

 

 レジはシャープ製タッチパネルモニター付本体と、自動釣り銭機、レシート用プリンター、スキャナ(スロット型・ハンディ型)、クレジットカードや電子マネー(オプション)の決済端末で構成する。電子マネーはWAON、nanaco、楽天Edy、交通系などに対応し、図書カードにも2022 年1月には対応する予定だ。

 

 同社セルフレジの特徴は、購入冊数を読み上げる機能や、顧客がレジを操作する中でブックカバーの要不要を選択できる機能、そして本体の向きを変えメニューを切り替えることで、顧客が商品のスキャニングから決済まですべてを行うフルセルフから、スキャニングなどを店員がサポートするセミセルフ、そしてすべての操作を店員が行う有人レジまで3パターンのスタイルで利用できることなどだ。

 

 保守は1年365 日の午前8時から23 時まで、同社コールセンターからリモートで行うことができ、「大抵のトラブルは解決できます」と多田元晴取締役は説明する。

 

【導入事例1】
宮脇書店越谷店「BOOKS ほんのいえ」

従業員のシフトの自由度が増した

 

 同社のセルフレジを最初に導入した宮脇書店越谷店「BOOKS ほんのいえ」は、東武スカイツリーラインの北越谷駅から徒歩12 分ほどの県道405 号線と19 号線の交差点にある郊外店。売場面積は1フロア160 坪、駐車場20 台、営業時間は9 時から22 時まで。メイン取引はトーハン。宮脇書店のフランチャイズとして開店してから25 年を迎える。

 

従来のレジカウンターに設置してフルセルフ型で運用

 

 同店はそれまでレジカウンター1カ所の有人レジ2台で対応していたが、「コロナ下の感染防止対策として従業員とお客様の接触をなるべく避けることと、レジ2台ではさばききれないほどの混雑時とそうでないときの差が大きかった」(加藤克宜社長)ことからセルフレジ導入を決めた。

 

 2020 年春の緊急事態宣言以来、競合店が入居する近隣の商業施設が休業したり、多くの人が在宅勤務になったことで、同店の来店客は増加。また、それまでの帰宅時間(夜間)よりも午前中から昼頃の時間帯が混むようになった。

 

1 人でも店が回るように

 

 導入したのはレジ本体、自動釣り銭機、レシートプリンター、スキャナーなどシンプルな構成だが、会員管理システム、ポイントカード、クレジットカードや電子マネーなど各種決済手段に対応が可能で、売上登録から決済完了まで購入者が操作できるフルセルフ型で運用している。

 

 「最初は従業員がそういうお客様をセルフレジに誘導し、一度説明しながら利用していただくと、次からはご自分で使っていただけます」と加藤社長。その結果、「レジにいる従業員が他の作業ができるようになりました。従業員は喜んでいます」という。

 

 繁忙期のレジ前混雑を軽減することができたほか、従業員3人のうち1人が休んでも対応が可能になるなど、「極端にいえば1人でもなんとか回ります。従業員のシフトの自由度が増しました」という。

 

【導入事例2】
くまざわ書店田町店

作業が効率化されコミュニケーションが生まれる

 

 くまざわ書店田町店は2021 年2月に光和コンピューターのセルフレジを導入したが、作業が効率化されたことともに、レジカウンターがなくなることで、スタッフと顧客との距離が近づき、自ずからコミュニケーションが生まれているという。

 

3台の有人レジだったカウンターにセルフレジ2台を導入

 

 同店は2018 年12 月、東京都港区のJR 田町駅からコンコースでつながるオフィスビル「田町ステーションタワーS」の4 階商業エリアにオープン。売場面積は250坪。店内には書籍・雑誌と文具・雑貨、さらに有料のシェアスペースと無料の展示コーナーを配置。隣接するスターバックスコーヒーとの間に仕切りがなく、ブック& カフェとなっているのも特徴だ。

 

 同店がある芝浦地区はもともとオフィスや倉庫が多い地域だが、近年は再開発によってマンションが増えている。「田町ステーションタワーS」の1階にはスーパーマーケットのライフが入居しているため、日常の買い物に訪れる人が多い。最大のピークである15~16 時頃にはそういう買い物客が数多く来店する。

 

 店舗は森田健嗣店長と社員1人、アルバイト15 人(常時3~4人)で運営。営業時間は9時~ 21 時、休業日はビルが閉まる年末年始のみ。レジコーナーは1カ所で、レジは光和コンピューターのKPOS(シャープ製)3台だったが、セルフレジ2台を導入してからは、セルフ2台と有人1台で運用している。

 

 接客を重視する同店では、セルフレジにも人を配置して、商品コードの読み込みからカバー掛け、袋詰めなどの作業は原則店員が行い、顧客には決済のみを任せるオペレーションだ。それでも慣れた顧客はだんだん手助けが不要になり、2台のセルフレジを店員1人で担当できる場面も増えたという。

 

接客の質を変えるセルフレジの効用

 

 森田店長はそうした効率化以上に「接客のスタイルが変わってきました」ということに手応えを感じている。

 

 セルフレジでスタッフが顧客の横に立ってサポートしていると、レジカウンター越しとは違う距離感になるという。「お客様の横に立つことで1対1の接客になります。ご要望やご質問にお答えしやすくなり、良い接客につなげることができるかもしれないと感じます」と話す。

 

 実際に問い合わせが増えるなど顧客とのコミュニケーションが増えており、当初、丁寧な接客ができなくなると不安を持っていたスタッフから、「むしろ感じよく接することや、いろいろ気づいてご案内することが必要だという声が上がっています」と、森田店長は意識変化を実感している。

 

 一見、人と人とのつながりを弱くするように見えるセルフレジも、使い方によっては、スタッフが本来の接客に集中するためのきっかけになるのかもしれない。

 

【導入事例3】
くまざわ書店蕨錦町店
2 台のセルフレジを店員1 人で担当

 

 くまざわ書店蕨錦町店は今年4月のオープン時からセルフレジの本格稼働を開始した。レジカウンターに組み込まれた2台のレジを店員1人でカバーできる形にして効率化しているという。

 

2台のセルフレジを1人の店員が担当する

 

 同店はショッピングセンター「ビバモール蕨錦町店」の2階専門店フロア200坪で営業している。レジカウンターは有人レジ1台とセルフレジ2台を同じカウンターに組み込み、2台のセルフレジの間に紙袋(無料)やブックカバーを利用する台を設けた。

 

 顧客がセルフレジを利用するときは必ず担当者が付き、商品のスキャンやカバー掛けなどをサポートする。セルフレジ2台を1人の店員がカバーすることで、1対1になる有人レジよりも効率が良いという。

 

 同店の要員配置は店長を含めて平日は3~4人、休日は5人ほど。レジは繁忙期を除けば1 人を配置しているが、お客が並んだ場合はセルフレジの利用を勧めることも可能だ。レジカウンター側にもモニターを配置して店員がレジ内から操作することもできる。接客・品出しなどに注力できる

 

 小川慎介店長は「通常はレジにお客様が並ばれると担当者がベルで応援を呼びますが、セルフレジのおかげで通常の店よりその回数はかなり少ないです。おかげで店頭での品出し作業などの効率が上がり、接客や整理整頓の時間が増えています」と話す。

 

 また、家族や高校生が数人で訪れることが多い同店では、セルフレジで精算した商品を裸のまま持って家族や仲間と店内にとどまることもあり得るため、店員が必ずサポートして紙袋かカバー、それらが不要というお客には栞を挟むなどして手渡すことで防犯にもつながる。さらに店員がサポートすることで、混雑時のレジ処理が早くなるという効果もあるという。