【出版時評】2025年12月9日付

2025年12月9日

出版の「聖地」で書店が再開

 

 三省堂書店の本店が来年3月19日に開店する。神保町交差点には、すでに「三省堂書店」と表示された13階建てのビルが建っており、22年3月の閉店から4年ぶりに日本を代表する書店が帰ってくる。


 同店の住所は千代田区神田神保町1丁目1番地。世界最大の書店・出版集積地である神保町のど真ん中。まさに日本出版界の「聖地」的な存在である。


 ビルの中で書店は1階から3階までの600坪。以前の神保町本店に比べると、売場面積は7割ほどだという。棚に段差をつけたり、斜めに配置して面陳を増やすなど、どこにいても本に囲まれるような斬新な空間づくりをするというので、在庫も以前ほどは詰め込まないのであろう。


 亀井崇雄社長は出版関係者とメディアを集めた開店100日前説明会で、売上見通しを前本店の「半分ぐらい行けば」と、やや控えめな発言をした。ビルの4階にはテナントで「THEジャンプショップ神保町」が入居するのをはじめ、5階~13階はオフィステナントが入る。この地に書店を残すために、収入源を確保して、手堅い見通しを立てていることを感じた。


 神保町では外国人の姿も多く見かける。海外で日本の出版物が売れるようになっている背景に、インバウンドの影響もあるという。そういう意味でも、出版界の「聖地」に書店が戻ってくるのを盛り上げたい。【星野渉】