【行雲流水】2025年10月28日付

2025年10月28日

 某月某日
 〝新聞屋〟らしからぬ〝新分野〟への挑戦が続く毎日新聞グループの毎日新聞首都圏センター・川口工場の多久幸男印刷副部長を『味の手帖』編集長として訪ねる。


 栽培室には、大ぶりのきくらげが、まさに〝生い茂って〟いる。24時間20~25℃、湿度90%に管理が徹底されていて、国内に流通するきくらげの中でも最上質のものが生産できているという。


 試食した生きくらげは肉厚で人の耳ほどの厚みがあり、戻した乾燥きくらげに比べると歯応えはソフトで風味がある。ユダが首を吊った木に生えたという言い伝えもあって、欧米では食されないとされるが、「食べる漢方」とも呼ばれるほど栄養豊富なきくらげは注目の食材。目のつけどころがいい。


 某月某日
 京都は大垣書店本社に大垣守弘会長を訪ね、コーヒー好きだった高倉健が通ったという近所の喫茶店「花の木」でランチを一緒する。


 コーヒーといえば、先頃銀座松屋で開催した「Tsu-tsu-mu Café by OGAKI BOOK STORE」は、居心地のよい空間づくりとデザイナーが選書する本が面白く、飽きさせなかったと話すと、人を出した割に結果は今ひとつだったと渋い顔。口コミでしり上がりに良くなっていたというから、18日間の開催は短すぎたのだろう。結果はさておきナイス・トライであった。


 長男、守可さんが渾身で発行する『KYOTOZINE』が苦戦、「息子は私の言うこと聞かへんねん」と。経験上、雑誌編集で得られる人脈と企画力は、必ず血肉となって返って来るはずと、援護射撃。


 某日某日
 京都新聞社・大西祐資社長を4年ぶりに訪問。創業家の株式買い取りが決着し、資金面と精神面でもすっきりしたと。本社跡地の開発の他、様々な改革が始動する。


 このところハマっているという『読書ラジオ』( stand. fm) は知らなかった。音声版ユーチューブのようなもので、色々な人が本について語っている。中でも、「ゆうこ」さんのファンで、毎晩寝る前に聴いているとか。たしかに、ちょっとアンニュイで静かな語りには引き込まれる。42歳管理職、一男一女の母。離婚していて17歳の息子と東京郊外で暮らす読書家というのも想像力を掻き立てる。


 ゆうこさんオススメの本を買っては積読している大西さん、大垣さんにも教えたいと。書店人は必聴である。「ゆうこファンクラブ」結成の折には、私も入会したい。