高まる海外市場への期待
コロナ禍を経て、欧米で日本コンテンツの需要が大きく伸びている。アメリカでコミックを出版している講談社の現地法人ではこの間に売上は2倍に拡大したというし、このほどドイツに法人を設立した日販IPSによれば、ヨーロッパでも日本のマンガや文芸作品の人気がかつてないほど高まっているという。
日本でもコロナ禍で巣ごもり需要が発生し、書籍やコミックスの売上は伸びたが、同じ状況が他の国々でも生じたようだ。しかも、日本ではその後、市場が縮小に転じているのに対して、アメリカやヨーロッパでは好調が続いている。
欧米ではコミック市場のほとんどが紙版だといわれるので、電子コミックが定着している日本とは事情が違うのかもしれない。いずれにしても、コロナ禍で拡大した市場がそのまま定着している。
かつて、海外との取引を専門に行う部署をもつ日本の出版社はほとんどなかった。名前が通った主要出版社でも、海外版権業務はエージェント任せが多かった。
しかし、いまは国内市場の厳しさを反映し、多くの出版社が海外市場に注目している。11月に開かれるTRM(東京版権説明会)の拡大もその証左だ。そんな時期に海外で日本出版コンテンツへの需要が高まっているというのは大きなチャンスだ。ぜひこのチャンスを生かす業界の取り組みを期待したい【星野渉】
