紙の環境負荷
EUの用紙規制「EUDR」の実施が、再び1年延期される見通しになった。他の地域からはもちろん、EU内からも反対や緩和を求める声が多く上がっていたというのだから当然なのかもしれない。ただ、あくまでも「ITシステムの容量不足」を理由とした延期なので、今後、規制内容が見直されるのかどうか、目を離すことはできない。
「EUDR」は紙を標的にした規制ではない。森林を守ろうという、至極もっともな目的だ。ようやく落ち着いてきたとはいえ、外出するのが危険なほどの夏を過ごすわれわれにとっても、気象の安定と、そのための森林の保護は切実な課題だと感じる。
一方で、用紙業界が一般の人々にアンケートを実施すると、「紙は環境に悪い」という回答が圧倒的だという。実際は、製紙業界の技術革新や努力によって、日本の紙づくりは環境負荷が極めて低い。にもかかわらず多くの人がネガティブなイメージを持っている。もしかしたら、紙を使う出版や新聞業界でも、漠然とそんな認識を持つ人がいるのではないか。
「ペーパーレス」と紙の環境負荷がどこかで混同されて、「紙」=「悪者」といった印象に結び付いているのかもしれないが、正確な情報を知れば、多くの人々は納得するであろう。少なくとも、人々の認識不足によって、紙の本や新聞の命運が尽きることは避けたい。【星野渉】
