【出版時評】2025年7月22日付

2025年7月22日

危機こそ外に目を向ける好機

 

 JPICは7月初めにフランスの出版・書店視察を実施した。政府機関幹部などとも面談し、書店支援政策などについてヒアリングを実施した。参加者は書店、出版社、取次などから27人と関心の高さをうかがわせる。


 視察はパリで「JapanExpo」が開かれる期間に合わせて実施。短期間に過密なスケジュールで政府機関、図書館、書店団体、出版社団体などへのヒアリングや書店視察などをこなした。


 詳しい報告は今後発表されると思うが、独立系書店に対する助成金や融資、若者の創業や承継を支援する取り組み、「書店学校」など、多様な支援策があるという。これまで日本ではあまり知られてこなかった情報も多いようなので、楽しみである。


 韓国の出版関係者は以前から、海外の情報を積極的に取り込んできた。日本にも頻繁に訪れ、ヒアリングや視察を繰り返してきた。坡州出版都市に建設した大型流通センターも、日本の取次などを参考にしたという。書店組合が書店学校を開設したときは、ドイツの書店学校を卒業した人を迎えていた。


 その背景には、1997年のIMFショックで出版流通会社が破綻するなど大きな影響を受けた業界の危機感があったと思う。危機こそ外に目を向けて新たなものを取り込む契機になる。旅行費用は高止まりしているが、業界の知見を広めたい。【星野渉】