【出版時評】2025年5月13日付

2025年5月13日

上野の森親子ブックフェスタの活況

 

 秋の神保町ブックフェスティバルと並ぶ春の読者向け即売イベントとして定着した「上野の森親子ブックフェスタ」は、今年もゴールデンウィークの2日間行われ、両日とも晴天に恵まれ、来場者は昨年を上回る3万4000人、売上金額は過去最高の4150万円を記録した。


 上野恩賜公園噴水広場に設営された会場には、開場前から来場者が列を作るほど。各出版社ブースでは、児童書の展示・即売とともに、著者などによる読み聞かせやサイン会に、人だかりができていた。
 出展した企業・団体も前回の65を上回る80に達したが、「ここは児童書を出していたっけ?」と思わされる出版社のブースも。聞いてみると、やはり最近になって児童書を出し始めたという。比較的安定している児童書市場に参入する出版社が多いことをあらためて実感する。


 そんなブースに並ぶ商品を見ると、ユニークなものも多い。実用系の出版社が子ども向けのマンガによる実用シリーズを出すなど、培ってきたノウハウを生かした商品づくりをしていたりする。そうやって特徴のある商品を出せば売れ行きも良いという。


 かつては売れる本が出ると次々類似本が出る「柳の下の泥鰌」が問題視されたが、見計らい配本が抑制されると難しくなる。それぞれがより工夫して商品を作るようになるとしたら、流通変革の良い面であろう。  【星野渉】