【出版時評】(2024年4月9日付)

2024年4月9日

老舗書店の次の一手

 有隣堂は前期で売上高約520億円の規模を誇るが、このうち書籍・雑誌の書籍事業は177億円と34%ほどで、アスクルなど通販31%(161億円)、外商によるOA機器18%(95億円)など65%以上を占める。

 

 このほど弊社セミナーに登壇した松信健太郎社長は、下がり続ける書籍・雑誌の売上をそのほかの事業が支えてきたが、書籍・雑誌の減少ペースをほかの事業で補えなくなりつつあると危機感を示した。その対策として複合化とファンづくりを進めてきたと。

 

 複合化の代表である今回のセミナー会場にもなったHIBIYA CENTRAL MARKETは黒字化を実現。誠品生活日本橋は転貸を含めると利益率が高いという。今後は飲食事業も拡大していく考えだ。一方、ファンづくりではユーチューブチャンネル「有隣堂しか知らない世界」の登録者数が企業チャンネルとしては驚異の約28万に達する。

 

 松信社長は、それでもなお既存店の落ち込みスピードに追い付くのが難しいと話した。そして、これからやることとして「事業全体の再構築」と「顧客目線を徹底した店作り」をあげた。事業の再構築については、全社的なプロジェクトチームで来期に向けて成長計画を構築中だという。

 

 創業115年を迎える老舗の跡取りとして大胆な改革を進めてきた松信社長の次の一手が注目される。 【星野渉】