【出版時評】2023年12月5日付

2023年12月5日

 パターン配本、ランク配本などと呼ばれる取次が書店の属性に応じて書籍を供給する仕組みに対して、出版社が配本先の書店を決めて送る指定配本があるが、近年この比率が新刊配本の80%に達するという。当社セミナー「キーパーソンに聞く」に登壇したトーハン・川上浩明副社長によると、同社が配本する書籍新刊に占める指定配本の割合は、2021年10月に約67%だったが、23年10月は82%を超えるほどだという。「取次がパターン配本で本を送っている」というイメージは大きく変わりつつあるのだ。

 

 おそらく、取次各社が返品率削減などに力を入れることで、出版社の希望通りに配本されなくなったことが指定率の上昇に結び付いているのだろう。業界が目指す需要に基づく供給体制という考え方に沿った流れではあるが、逆にこのことが過剰送品につながり、トーハンでは出版社53社の指定配本減数に踏み切ったという。

 

 特にコロナ明けで訪店営業が可能になった出版社が積極的に注文を取っている面もあるようだが、書店側でも従来のように多めの部数を発注してしまう傾向があるという。事前受注が当たり前のドイツの書店では、シーズンごとの新刊発注はスタッフで話し合い、部数は「一番慎重な意見に従う」と話していた。日本は仕組みの変化に意識改革が追いつくための訓練期間だともいえる。【星野渉】