【行雲流水】2023年10月3日付

2023年10月2日

 

 某月某日

 

 「書店新風会」山形総会に参加する。途次、福島民報と福島民友の両社長と面談。コロナ禍も落ち着き地方紙各社を順次訪問しているが、全社制覇の道のりは長い。
 夕刻より、「角川春樹トークセッション」。冒頭、新文化通信社・丸島社長が逮捕と出所の年を紹介し会場を沸かせる。山あり谷あり、81歳の豪傑が、ひたむきな書店愛を語る。続く懇親会と二次会は4時間以上か。山形産ワインと日本酒のせい?で終盤は記憶無し。
 翌日、夕刻に所用が入り、ゴルフをパスして山形新聞社を単身訪問。星野社長におかれては、山寺観光とぶどう狩りを楽しまれた由。
 帰京前に今回の総会の現地幹事社である「八文字屋」の本店を覗く。店内に掲げられている歴史を感じさせる大看板。HPを見ると、「創業は元禄8年。紅花商を営む初代五十嵐太右衛門の後を継いだ二代目が、上方との商いを通じて、 浮世草子を山形の地に持ち帰ったことが八文字屋の歴史の始まり」とある。京都の版元の名で呼ばれた「八文字屋本」を屋号としたというわけだ。2階では文具・雑貨の品ぞろえが充実している。特に「月山ブルームーン」「樹氷アメジスト」など、山形の四季折々、自然のモチーフを表現した同社オリジナルのインクや万年筆、ガラスペンが美しい。売り切れているものも多く外国人にも人気のようだ。

 

 某月某日

 

 慶應義塾高等学校の全生徒・教職員に「先輩の本棚」を寄贈した縁で、在校生有志6人と「こんな本屋さんがあればいい」をテーマに車座になって語り合う。
 「オーナーのこだわり、世界観が表現されている書店」「書店員がおススメする本のコラムを書いている」「地域に密着した崇文堂書店(麻布十番)のような書店」「精神論と物理学など二項対立の本が並べられている書店」「ブックカバー(タイトルと目次)だけの本屋。その場で注文し、後で配送される」は、リアルとネットの中庸か。「一つの分野に特化した書店」「著名人(スティーブ・ジョブス、イーロン・マスク、ジェフ・ベゾス)の本棚が再現された書店」等々。
 感心した(面食らった?)のはA君のメモ。「校閲の注文ができる書肆。e.g.『旧字体→舊字體』、特に原文のかな遣い、字体の一致、外国語などの引用」。〝書肆(しょし)〟と来たかと星野君ともども苦笑。A君曰く、「ラテン語の綴りは間違いが多いんです」と…。恐るべき17歳。
 車座談義、またやってみたい。【山口健】