【出版時評】気にしすぎだろうか

2023年5月30日

 細かいことだが、「独立系書店」という言葉の使い方が気になっている。先日、新聞記事で「独立系書店」を「大手取次を利用していない書店」と書いていたが、最近、そういう使われ方が多いように感じるからだ。

 

 「独立系書店」は、英語の「インデペンデント・ブックストア」の訳語だと思われるが、アメリカやヨーロッパなどでは、いわゆる書店組合に所属しているような「町の本屋」のことをこう呼ぶ。「独立系」とは資本が独立していることだと聞いた。欧米では大規模チェーン書店のシェアが高く、そうした書店が株式を公開しているのに対して、オーナーシップで経営している書店を「独立系」と呼ぶ。

 

 そういう意味で、最近、日本などで創業が目立つ個人で運営する小規模書店なども含まれるが、老舗の書店も「独立系書店」と呼ぶのが妥当だ。もともと日本は「独立系書店」の比率が高い国だった。

 

 どうしてこんなことを気にするかというと、書店数の国際比較をするとき混乱するからだ。アメリカで独立系書店が増えているというのは、書店組合に加盟する書店数のことであり、日本で増えている個人書店とイコールではない。日本では今も書店組合の加盟数は減り続けている。

 

 これから国や社会に書店支援を求めていくうえでも、言葉の定義ははっきりさせた方がよいと思うのだが。気にしすぎだろうか。  

 

【星野渉】