【行雲流水】「The Bunka News」2023年5月30日付

2023年5月30日

 某月某日

 「KUDAN HOUSE」に「青山浅田」の弁当を持ち込み、神奈川大学・須崎文代工学部建築学科准教授×遠山正道対談に同席。須崎さんは『台所見聞録』(LIXIL出版)を著すなど、近代住宅建築、特に台所・風呂・便所を専門に研究している。まずは昭和2年に建てられた登録有形文化財の隅々を見学、実に素晴らしい。

 「近世までは『土間』で泥のついた野菜の処理や水仕事、『床上』で切り盛りや配膳をした。調理は俎板を床に置き、膝をつく蹲つくばい踞式が主流だった」という。テレビ時代劇にも出てこない情景である。

 食後、「うんち」の話で盛り上がる。犬やウサギなど多くの動物や生き物はうんちを食べるのに人間だけは食べない(小水を飲む向きはいるようだが)。身体から出たとたんに汚いもの?畑の野菜はし尿の堆肥で育てていたし、馬糞は燃料にもなっていた。古代ローマでは尿は歯磨きや皮なめし、洗剤として活用され、回収業者に課された尿税はコロッセオの建築費の一部に充てられた⋮などなど。

 口に「入る」話のみならず、「出る」話も大切なテーマではないか、と『味の手帖』での連載決定?

 某月某日

 「日比谷聘珍楼」でロッテホールディングスの玉塚元一社長を囲む。慶應義塾で高校、大学とラグビーに明け暮れた若者は、発起し留学。MBAを修め、コンサル先の顧客として柳井正氏に出会う。

 「経営はコンサルとかMBAじゃできない。なけなしのカネで店を出し、商品を並べシャッターを上げても客が来ない。何度も品揃えや陳列を変えて胃が痛い思いを経験しないとダメなんだよ」と言われ柳井門下生となる。徹底的に顧客の声を聴き、ネガティブな評価は逐一速やかに改善する現場主義はローソンでも。そして今、ロッテでは、「韓国シーズを日本へ、日本の技術は韓国に、そして韓国×日本でグローバル市場へ」。

 我々も、顧客をど真ん中に「商い」の原点に立ち還らねば。

 某月某日

 日曜の午後、5時間だけ開催される「文学フリマ」に初出店。開場を待つ長蛇の列は30分ほども続き、1万2千人近い空前の入場者で賑わった。星野・原・増田の4人で『先輩の本棚』と『こどものための100冊』を原価割れで販売。活字好きに受けて、結構売れた。

 小社はBtoBのビジネスだが、「前橋ブックフェス」も然りで、直に客と向き合う現場は楽しい。