【出版時評】これからの出版業界を誰が担うのか

2023年2月7日

 2022年の出版市場は4年ぶりにマイナスとなった。巣籠り需要の終息や物価高などが影響したといわれる。好調だった電子出版、特に電子コミックの成長も1桁台となり、市場拡大にブレーキがかかったとも指摘されている。

 

 一方で、スマートフォンなどで読まれる縦スクロールマンガ「ウェブトゥーン」は、数年後に世界で3兆円を超える市場規模になるとの予測もある。世界最大の日本マンガ市場の数倍だ。それが本当なら、電子出版市場はまだまだ巨大化するのではないか。

 

 日本では多くのマンガ雑誌と各レーベルの単行本が創刊され、新人を発掘し育て、食べさせるプラットフォームとなったことで、質量ともに世界最大のマンガ市場を形成した。そうしたプラットフォームが確立する前にネットシフトが進んだ韓国で縦スクロールマンガは発達した。

 

 フィルムカメラやレコード・CDの市場が小さくなったからと言って、画像や音楽市場が衰退したわけではない。出版も、木版から活版印刷に移行した明治期に、江戸時代から出版を続けてきた人々の名前が本の奥付から消えたというが、出版産業が衰退したわけではなかった。

 

 雑誌が担ってきた情報や広告のビジネスはむしろウェブで拡大している。マンガも新たなプラットフォームで急激な広がりを見せる。その担い手がこれからの出版業界なのであろう。

 

【星野渉】