【出版時評】ビジネスモデルの転換は可能なのか

2022年11月22日

 雑誌に依存してきた出版流通が立ち行かなくなるなか、今後目指すべき方向のひとつとして「ドイツモデル」が示されてきた。ただ、「なるほど」と思わされても実現には至らない。既存の仕組みを転換させることは難しいようだ。

 

 ドイツの書店は、雑貨や玩具などは日本以上に扱っているが、雑誌は販売していない。取次は書籍だけを運び、夕方4時までに注文すれば、翌朝6時までに届けてくれる。しかも日本と同様に価格拘束制度があり、書店は売れない本を返品しているが、返品率は10%程度にとどまる。

 

 これだけ聞くと理想的のように思えるが、もちろん課題はあるし、日々新しい書籍・雑誌が店頭に届き、多くの客であふれる日本の書店のような風景はない。それでも、既存の制度が崩壊してしまった日本の出版業界が目指すべき姿に映るのであろう。

 

 特に雑誌市場の縮小によって、出版物の販売だけでは書店の経営が成り立たなくなった日本の現状からみると、書籍の価格が日本より相当高いうえに、書店マージン率が40%程あって、書籍が売れさえすれば経営が成り立つビジネスモデルはうらやましい。これは書店が配本に頼らず、すべての書籍を選んで仕入れることで、結果として返品率が低いことが可能にしている。これまでの日本のモデルの真逆といえる。その選択ができるのか。もう瀬戸際にあるように見える。

 

【星野渉】