【出版時評】雑誌の力を再認識

2022年10月18日

 雑誌の販売部数は減り続けている。出版科学研究所の調べでは月刊誌と週刊誌を合わせた雑誌の販売部数は昨年夏から毎月2ケタ減が続き、今年1~8月で前年同期比13・4%減である。いよいよ今年は雑誌販売額を電子書籍の売り上げが上回る公算が高い。

 

 一方で、ビジネスモデルを変えることで、可能性を広げている雑誌も少なくない。先だって行われた日本ABC協会特別フォーラムで紹介された『ハルメク』『LEE』『オレンジページ』の事例はまさにそんな思いを強くさせた。

 

 『ハルメク』は雑誌を作るための事前調査や、発売後の読者満足度調査などを徹底的に実施して、作り手が読者の考えや嗜好を自らのものにしている。『LEE』は「LEE100人隊」という読者ブロガーが、雑誌作りからタイアップ広告まで参加している。『オレンジページ』はファンベースカンパニーのノウハウで読者の志向を言語化し、編集の方向性を明確にしたという。

 

 各誌それぞれ独自の取り組みをしているが、作り手と読者の垣根を低くし、雑誌ブランドのファンになった読者に通販や商品開発、ネットなど多面的なサービスを提供していることは共通している。雑誌の販売状況が厳しいとはいえ、単に「紙の冊子を販売する」というモデルを変えることで、雑誌ブランドはこれまで以上の力を発揮しているように見えた。

 

【星野渉】