【出版時評】気になる大型書店の行く末

2022年9月12日

 八重洲ブックセンター本店が、再開発によって閉店する。1978年に、日本最大の書店を標榜して東京駅前に開店した日本を代表する大型店だ。これに先立って三省堂書店神保町本店もビルの建て替えで閉店したが、大型書店の行く末が気になる。

 

 当時の本紙によると、開店日に開かれた披露式には、当時の砂田重民文部大臣、大平正芳自民党幹事長、中曾根康弘自民党総務会長をはじめ800人が列席したという。政治家でもあった鹿島守之助氏が並々ならぬ情熱を傾けた事業であったからではあろうが、通常の書店開店では考えられない規模だ。

 

 一方で、同店開店を報じた本紙の別面では、日本書店商業組合連合会の「出店問題」を報じている。披露式に参加した当時の松信泰輔日書連会長があいさつで「適正規模にもしぼりこんだ」と述べているように、同店は8階建てのビルだが、開店時は4フロア750坪での営業だった。

 

 当時、日書連が問題視していた大型出店は200坪~400坪程度。その後、ロードサイドの郊外店などが急増し問題視されたが、大店法の緩和で、1000坪を超える店舗も珍しくなくなった。

 

 いま都市部のターミナル駅周辺の大型書店は、コロナ禍によって来店客数が減少するなど厳しい。八重洲ブックセンター開店から45年。書店を取り巻く環境は大きく変わった。

【星野渉】