【出版時評】リアル会場ならではの良さ

2022年4月12日

 本屋大賞の発表会が2019年以来、3年ぶりにリアルな会場に人を集めて開かれた。実行委員会や受賞出版社、そして取材関係者のみの参加ではあったが、実行委員からは「明治記念館に帰ってきた」という感慨も漏れた。

 

 『同志少女よ、敵を撃て』で大賞を受賞した逢坂冬馬氏は、受賞あいさつでウクライナ戦争に反対する考えを強い口調で話した。話し終えたとき、会場からそれまでより大きな拍手が沸き起こったが、その場で聞く臨場感がそうさせたのだと感じた。同書は受賞を受け35万部を重版し累計46万部という。

 

 いつもは全国から大勢集まる書店人も、今回はほぼ実行委員会メンバーに限られていた。それでも、和歌山から駆けつけて中締めのあいさつを行った岩瀬竜太さん(宮脇書店和歌山店)は、実行委員になって初めて会場に参加できたと喜びを語っていた。

 

 とりわけ受賞者や主催者にとって、こういうハレの場は特別だろう。次の仕事に向けてモチベーションが上がったり、そこでの出会いから、新しいことが始まることもある。社会的制約は緩められてきていても、感染症はなかなか静まりそうにない。マスクを付けた生活はまだしばらく続きそうだ。それでも、リアルな授賞式や表彰式は、作品を生み出す人々を支えるために、なるべく開いていくほうが良いのかもしれない。

【星野】