【行雲流水】文化通信2022年3月1日付

2022年3月7日

 某月某日

 東京新聞が主催する「第十八回新聞切り抜き作品コンクール」の記事を読む。2000編近い応募作品の中から選ばれた小・中・高各部門の最優秀と優秀作品を紹介している。時節柄、選ばれたテーマはオリ・パラやコロナに関連したものが多い中で、慶應義塾幼稚舎6年の児童が「SNSが悪者なのか?」をテーマにしている。紙面はもとより、電子版を拡大しても文字が潰れ作品の詳細が見られず残念、読んでみたかった。

 多くの地方紙で開催されているこの企画、募集は大別して「切り抜き」と「手書き」に分かれていて、北海道新聞は"両刀使い"、沖縄では沖縄タイムスが切り抜き、琉球新報が手書きに"棲み分け"されている。昨秋小社で開催した地域紙を対象とした「ふるさと新聞アワード」でも、子どもたちが参加できる仕掛けができないものか⋮。早速考えてみたい。

 某月某日

 夕刻、渋谷「コクーン歌舞伎」に。河竹黙阿弥原作の「天日坊」を10年ぶりに再び串田和美が演出、今回は脚本を宮藤官九郎が手掛ける話題作とあって、満員御礼。

 毎月のように歌舞伎座と国立劇場に出かける歌舞伎ファンの端くれとしては、コクーン歌舞伎からも目が離せない。94年から始まった中村勘三郎と串田和美の新たな試みは「守破離」、伝統芸能としての要諦を押さえつつ、革新的な演出が歌舞伎の新境地をひらいてきた。俳優・笹野高史や小松和重といった錚々たる"余所者"がひと味違う存在感を放ち、長唄や三味線、鳴物に代わり、舞台袖の左右からはトランペットやキーボード、パーカッションの生演奏が心を揺さぶる。文字通り、目いっぱい「傾かぶく」3時間余りの舞台を堪能。それにしても勘九郎、親父殿によく似てきたな…。

 某月某日

 昨年秋に終売となった「文豪珈琲」の新バージョンがデザイン、容量ともに一新し、完成。今回は森林火災や違法伐採によって減少するインドネシア・スマトラ島の熱帯雨林と、その森を棲み処とするゆえに絶滅危惧種となったオランウータンを保護する「オラウータンコーヒープロジェクト」に賛同し商品化した。スマトラ島の一部で栽培されるアラビカ種・マンデリン100%のコーヒーは、手前味噌ながら、すこぶる美味しい。

 一本の木から作られた紙の上に載る活字はうつくしい。丁寧に淹れた一杯の珈琲とともに、是非。

 

【文化通信社 社長 山口】