学習参考書市場はコロナ下の巣ごもり需要もあって、このところ好調が続いてる。だが同時に、ライフスタイルの変化によって「GIGAスクール構想」をはじめとした政府主導による教育のICT化が推進され、「紙」の参考書を作り、提供してきた出版業界にとっては想定以上に変化が速く進み始めたともいえる。
慣れ親しんだ紙のよさ、一方で瞬時にあらゆる情報にアクセスできるデジタルのよさ。我々の生活実感から考えて、いずれも否定できない。そもそも太古の賢人たちは紙のない時代にあれほどの見識を得て表現してきたのだから、「紙」が絶対とは言えない。
ただ、デジタルもウェブやSNSなどは文字だらけ。人々が文字を通して知識を得て、思考を巡らせるという営みには、変わりがないようだ。これからも子どもたちが良質な文字表現に触れる機会を提供するのは、出版業界の公的、かつ重要な役割であろう。
紙であれ、デジタルであれ、人々が容易に文字表現に触れる環境を整えるため、技術革新に対応しなければならない。特にこれから学習書や児童書といった子ども向けの媒体でそのことの意味が大きくなる。
また、社会全体でも文字に触れることの大切さはある程度共有されていると思うが、そのことを社会に浸透させるのも、業界の仕事であろう。
【星野渉】