【出版時評】「決済」で出版流通を改革

2022年2月8日

 出版社と書店の受発注サイト「一冊!取引所」がその場でクレジットカード決済できる仕組みを導入した。これによって、取次を通さなくても、出版社が代金を回収できないという心配はなくなる。 これまで出版社と書店の多くが取次経由での取引を選んできた理由として、配本と並んで決済機能の存在が大きかっただろう。

 

 多くの書店に請求書を送ったり、入金を確認し、未収なら再請求する手間を考えれば、直接取引の大変さは想像に難くない。 こうした取次の機能がないアメリカで、多くの出版社が大手出版グループの傘下に入るのは、こうした決済や、書店の信用管理といった業務の煩雑さがあると聞いたこともある。

 

 一方で、アメリカのブックフェアでは、書店が出版社やリメインダー業者のブースで、仕入れ代金をクレジットカード決済しているのを目にし、これなら海外の業者も容易に仕入れられると感じた。

 

 「一冊!取引所」には最近創業した個人出版社や個人書店も多い。そういう人々からは、むしろその場で決済出来るクレジットカード決済を望む声が多かったという。仕入れる側がしっかり判断していれば、お互いにリスクが低くなるといえる。こうしたところから、出版流通改革が進むのかもしれない。

【星野渉】