【出版時評】変わるのか“注文殺到”の風景

2021年11月2日

かつてはベストセラーが出ると出版社営業部の電話が鳴り続け、部員は1日中その対応に追われた。そんな光景も過去のものとなろうとしているのか。

 もちろん今も大ヒットがあれば多くの電話注文が入るだろう。しかし、KADOKAWAなどはWeb受注や書店とのEDIによって、電話やFAXの注文は数%まで減ったという。他の大手出版社でもWeb経由の注文が全体の半分近くになったという話を聞いた。

 品薄商品を確保するためならいざ知らず、通常の補充や注文品まで電話やFAXで取り寄せるというのは、我々の生活感覚からしてもズレているように思う。出版社の新入社員が、それまでFAXを使ったことがなかったという笑えない話もある。

 一方で、多くの出版社は、受注の仕組みを取次経由にあわせて構築しているので、電話やFAXはもちろん、メールやWeb経由の注文であっても、取次からのEDI発注の方が効率が良いということも多いようだ。一方、書店からはWeb受注に対して在庫確保の不確実性やサイトの多さに不満が集中する。

 やはり、インフラというのであれば、たとえ複数の仕組みがあるとしても、仕様や使い方がある程度は標準化されていて、各社のシステムとも連動できる方がよいだろう。書誌情報整備の次にある課題だろうか。   

 

 【星野渉】