【出版時評】書籍流通を改革するPOD

2021年8月30日

 大日本印刷(DNP)が、アメリカの取次会社イングラムの子会社ライトニングソース社が展開するプリント・オンデマンド(POD)のネットワークに参加する。世界最大のPOD企業が持つ英語を中心とした豊富な書籍タイトルを日本の利用者が国内で購入できるようになる。

 

 ライトニングソース社のネットワークは、ヨーロッパやアジア、南米など日本を入れて15カ国に提携先がある。言い換えるとそれだけの国々で輸出入を伴わずに書籍を販売できるわけだ。

 

  例えばドイツでは最大手取次でありヨーロッパ最大のPOD会社を傘下に持つリブリ社と提携しているので、ライトニングソース社はドイツで多くの書店を通してPOD書籍を販売している。アメリカの取次が保有するコンテンツをドイツの取次を通して販売し、その利益は当然、出版元や著作者に還元される。

 

  PODのキモは、プリント(印刷技術)よりもデマンド(需要)にあるのではないか。だから、アメリカやヨーロッパの大手POD会社は技術を持つ印刷会社ではなく、需要が集まる取次会社が運営しているのだろう。

 

  DNPはトーハンと提携するなど出版流通改革にも関わりが強い。

 

 日本でもPODが書籍流通の有力な手段として存在感を発揮して、流通改革の原動力になってほしい。         

 

【星野渉】