【出版時評】誰が需要を見極めるのか

2021年6月7日

 今年に入って大手取次各社が異業種との提携や協業について発表したり、このほど開いた施策説明では「改革」の具体的なイメージやタイムスケジュールなどが示された。いよいよ取次による出版流通改革が本格的に動き出した感がある。

 

 要約すると、配送網を支えるため同業との協業を含めた物流施設の統合や異業種との協業を進める。一方で、AIなどの技術を使って需要予測の精度を高め、返品率を大幅に下げ、書籍の収益でも書店の経営が成り立つように粗利益率を上げようということだ。その中で「発注は(取次に)任せていただく」というフレーズもあった。

 

 一方、先日開かれた「TSUTAYA BOOK方針発表会」では、TSUTAYAの本部が「仕入に100%コミットする」ことで返品率10%を目指すという方針が示された。

 

 返品率が低い欧米では、書店が今後刊行される新刊を含めてすべての商品を仕入れている。独立系書店などはバイヤーが人力で、大手チェーンやネット書店などは需要予測システムを使っているようだが、需要予測は書店側が行う。「仕入れる」感覚が強いのだ。

 

 需要予測=供給のイニシアティブを誰が握るのか。出版流通が転換するなかで、いろいろな形が出てきそうだ。

【星野渉】