【出版時評】緊急事態宣言下で判断分かれる「本屋」

2021年5月10日

 ゴールデンウィークは昨年より人出が多かったようだ。童話にもなり、昔からいわれ尽くしてきたことだが、「緊急」も繰り返されると「緊急」と感じなくなるのだろう。東京などに出されている緊急事態宣言は5月末まで延長される。市井の雰囲気とは別に、オリンピックまでには、という政府の必死さが見える。

 

 その緊急事態宣言下での商業施設やイベントなどへの要請内容も変わってきた。ウイルスの危険性や対処方法がある程度わかってきたり、新たな変異株が出現するといった変化もあるから当然といえよう。 出版業界の者としては休業要請の対象に「書店」が含まれるのかどうかが気になる。今回も東京では「本屋(新刊書店)」は含まず「古書店」は対象だ。大阪、京都、兵庫では「書店(新刊)」「古書店」とも床面積1000平方メートルを超える場合は休業を要請している。

 

 自治体などによって判断が分かれるのは致し方ないとして、東京都が「新刊書店」と「古書店」で判断を分けているのが不可解だ。「新刊」は必需品で「古書」は不要不急ということなのだろうか。そのように本を区別する思考方法は謎である。

 

 それでも「書店」を「社会生活を維持する上で必要な施設」(東京都)としていることには安堵する。それが“常識”として広まることには期待したい。

【星野】