【出版時評】コロナ下で客層が変化した個人書店

2021年4月26日

 また緊急事態宣言が発出された。少し収まって解除すると増加という波を繰り返し、「何波目だっけ?」と首をかしげる。町中の人出を見ていると、さもありなんという気持ちにもなる。あとどれぐらいこうした波がやってくるのだろう。

 

 そんななかで、先日、数年前に個人書店Titleを開いた辻山良雄さんに偶然出会った。立ち話ではあったが、彼の店もコロナ下で売れ行きはよいと話していた。そんななかで客層の変化を感じているという。

 

 Titleは開店当初から売り上げはほぼ辻山さんの予定通りだったが、想定より客数は少なく、客単価が高かったという。

 

 立地はJR中央線の荻窪駅から徒歩15分ぐらいの青梅街道沿い。決して繁華街や人通りの多い場所ではない。思ったより近場の人より同店を目指して来店する遠来の客が多かったからだ。辻山さんの発信力の強さのおかげだろう。

 

 それがコロナ下で近場の客が増えたというのだ。在宅が多くなった人々が同店を覗いて来店するようになったのだろう。もともと尖ったセレクトショップではなく日常使いの「街の本屋」を目指していた辻山さんにとっては、「目指していた形が想定より早く来た感じ」と話していた。同時に「本を読む人が増えていると感じる」とも。これからもウイルスに負けず頑張ってほしい。

【星野】