【出版時評】デジタル化で勉強は楽になるのか?

2021年4月12日

 久しぶりに自動車のカタログを見ていると、ドライブレコーダーやセンサーは当たり前で、最近はパーキングブレーキも電動化されていて、クラッチに続いてサイドブレーキもなくなっていたりして驚かされる。

 

 教科書のデジタル化がここに来て、再びにわかに注目を集めている。10年ほど前に盛り上がり、教科書供給を担う書店などが危機感を抱いたが、その後紙との併用に落ち着いた。それが、先頃開かれた文科省の有識者会議で2024年度に本格導入の案が示されているという。

 

 こうした変化に対して、教育現場や教育専門家からはあまり前向きな意見は出ない。ただでさえ忙しすぎると指摘される学校で、これだけ大きな改革を短期間に実行することを考えれば当然であろう。

 

 一方で、コロナ下で我々がオンライン会議を当然のこととするようになったように、社会全体のデジタル活用には拍車がかかり、昨年は休校などの影響を受けた学校教育への導入も例外ではないということだ。

 

 4月9日の朝日新聞朝刊で国立情報学研究所の新井紀子教授がデジタル教科書導入の様々な問題点をあげ、「楽をして学ぶことで、失うことはないか」と指摘していた(新井紀子のメディア私評)。いまさらクラッチは使いたくないが、確かに「楽な勉強」に効果があるのかとは思う。

【星野】