【つぶや記】文化通信2021年3月22日付

2021年3月22日

 

 部屋で古い荷物を片付けていた時、小さな紙包みが床に落ちました。中身は、若い頃にいただいた鉛の活字でした。当時ですら組版は写植の貼りこみが主流でしたから、鉛の活字を使った仕事をするとは思いませんでしたが、その後間近に見ることになりました。

 

 原稿と文選箱を手に、活字棚から次々と活字を拾い、その活字にインテルを挟んで組版し、ゲラ刷りをする工程にも立ち会いました。文選は熟練した文選工の独壇場とはよくいったもの。試しにやらせてもらいましたが、棚のどこにどの活字があるのか分からず、お手上げだったことを覚えています。

 

 今でも活版印刷は存在していると思いますが、組版の主流はDesktop publishing となり、それもまた変わりつつあるようです。そこにもお手上げになるような独壇場の職人技は…

【近藤】

 


 

 根岸の元競馬場(正式には根岸森林公園)にちらっと寄って見た。桜の名所は星の数ほどあるが、自分の記憶の中で根岸の桜はナンバー・ワン。三ッ沢公園もいい。上野公園もいい。しかるにここはもっといい。なぜか!その理由は地形に答えがある!と去年知った。

 

 競馬場だったので外周のスタンド部分が高くなっていて、真ん中のトラック部分が盆地のように窪んでいる構造。そして桜の森が向こう側の斜面に沿って扇状に連なってるから。ちょっと強めな風が吹くと、甲子園球場で起こるウエーブをバックネット裏で観る(一度体験したことがある)イメージ。向こう正面の大波はよく見えるが、自分が作っている波は見えない。まずは遠くからうねるようなピンクのかすみを見て、その後近づいてディテールを見るのが最高のようだ。

【岩元】