【出版時評】講談社が総額表示で文庫をパック化

2021年3月15日

 講談社が文庫のフィルムパック化を始める。目的は4月からの総額表示義務化に対応するためだという。本体の表示は変更せずに、パックの上に総額のシールを貼る。そのほかの書籍は、それぞれの状況でスリップのボウズ、帯、(本体)に入れるという。

 

 同社はいち早くコミックスのフィルムパック出荷を始めており、このことでパック化のノウハウや検証が蓄積たことが、今回の措置につながったと言える。

 

 本のパック化については以前から議論があった。書店でコミックのパック化が始まったのはまだ売り上げ好調だった80年代後半。コミック売場が立ち読み客で混雑していた時代で、主に混雑と読み散らかされることに対応する措置だった。パック化によって確かに立ち読み客は減少したが、それはコンビニエンスストアの雑誌棚に移り、書店にとって大切だった雑誌の売り上げがコンビニに移行する要因ともいわれた。

 

 一方で、講談社はパック化による返品改装や廃棄の軽減効果もあるという。店頭で1冊見本用にパックを外しても、全体で改装・廃棄が減るのであれば、むしろプラスということだろう。

 

 消費税法の特例措置はいよいよ今月で終了する。多くの出版社は業界団体が示すガイドラインを参考に対応するのだろうが、パック化のような変化を進める契機になるのかもしれない。

【星野渉】