【出版時評】感染症下で伸びる電子書籍市場

2021年3月8日

 首都圏の緊急事態宣言は2週間延長され、7月のオリンピックには外国からの観客を入れるか否かの話になっている。ワクチン接種が始まったとはいえ、そう簡単にもとの生活には戻れそうにない。むしろ在宅勤務やリモート会議などにも〝慣れ〟て、もとには戻らないと感じる。

 

 今回の感染症拡大は、地震や大雨など他の自然災害に比べて長期にわたっていることが特徴だ。それに伴って、広範にわたって人々の日常生活や仕事に大きな変容をもたらしている。

 

 オンラインミーティングでもたつく人もほとんどいなくなり、さも当然のように使っている。むしろ、オンライン会議であれば、これまでより迅速に、しかも遠方の人とでも始められるといったメリットもある(しかも時間が短くてすむ)。パソコン、タブレット、スマートフォンなどがあれば、事務所でも在宅でも、移動中ですら打ち合わせが可能だ。良いことかどうかは分からないが日常だ。

 

 当社が電子書籍製作・流通協議会、東京電機大学エルゴノミクスデザイン研究室と共同で実施した「2020年度電子書籍ビジネス動向調査」によると、電子書籍の市場は感染症の悪影響は受けず、プラスで推移している。電子書籍元年と呼ばれて久しいが、今の環境は出版の技術革新を広げる契機にもなっている。これをチャンスと捉える必要があるだろう。

 

【星野渉】